自閉症の障害のある子供達は、一体どんな学校に入るのか、私は何も知りませんでした。
リハセンターの通園に通い始めた頃、先生にルカにはどんな学校がいいのかと聞いたところ、普通学校の特殊級がよいだろうと言われ、やはり、少しショックでした。
大変失礼な話ですが、その頃、私が特殊学級に抱いていたイメージは、あまり良いものではありませんでした。
学校のすみの教室で、ほとんど普通の子供たちと接点がなく、隔離されるようなイメージを持っていました。
ルカが、年長の頃、普通の子供が通う幼稚園に、1年だけ通いました。
卒園の頃には、だいぶ適応もよくなり、幼稚園の先生からは普通級でも大丈夫では?といわれていました。
でも、私の目には、一見適用がよさそうなのですが、集団の中で指示されている意味がわからないのに、みんなの動きを見て、一生懸命みんなについていくルカのギリギリの姿が、映っていました。
それは、ピーンとはりつめた糸を連想させ、いつかは切れてしまうことを、私に予感させました。
集団の中では、なかなか大変なことが多かったルカですが、一方、1対1でのコミュニケーション場面では、おちついて質問されたことに対しても答えられるようになり、課題学習でも小人数であれば、学習したものを、どんどん吸収できる力があることを知りました。
ルカのためには、ルカにあった個別の指導というものがぜひ必要である。
個別の指導を受けながら、部分的に集団の活動にはいり、社会性を身につけていけたら・・・・・と、思いました。
現在の学校制度の枠組みでは、それをかなえてくれるのは、特殊級しかないと思いました。
普通級に通いながら、週に一回程度障害児のための学級に通う制度−通級制度の利用ということも、考えられたのですが、通級に通えない残りの日を、普通級の中で過ごさせるのは、ルカにとっては、過酷なことのように思えました。
しかしながら、特殊学級に行ったからといって、自閉症のための専門的な教育を受けられる保障は、どこにもありませんでした。
自閉症の知識のある先生が、普通・特殊学級ともに、非常に少ないことは、私も知っていました。
でも、普通学級にいくよりは、少しは、ましな教育がうけられるのではないか?
当時は(現在も?)、よりよい学校を選ぶというよりは、少しはましな方を選ぶという状況でした。
ところで、私達の住んでいる市では、養護教育総合センターというものがあり、障害児の学校選択の相談窓口となっています。
私も、ルカをつれてセンターを訪れ、学区内の特殊級希望であることを伝えました。
担当の先生は、ルカの様子を見ながら、「リハセンターみたいなところで、こんなによくなりますかねぇ・・・・・・」と、もともと、障害などないのに、親の愛情不足が原因では?ということを、遠回しに言われました。
あげくの果てに、「就学時健診のときは、障害児であることを黙って受けてみなさい。
大丈夫。三年生くらいになったら、普通になりますよ。」と言われました。
学区内の特殊級を見学してみたいと言うと、「プライバシーの問題があるから、それは、どうかな?」と断られました。
(注:現在は、養総センターもかなり改善されているようです。)
私は、この言葉を聞いて、もう、センターへは、相談すまいと思いました。
そして、就学時健診の前に、自分で学校に電話をかけ、校長先生に特殊級にいれてもらうよう、お願いしました。
学校では、特殊級に入ることは、承諾してくれましたが、特殊級の先生に会って、話が聞きたいという私の願いは、受け入れられませんでした。
「4月に入学したら、ゆっくり考えましょう」これは、昔も今も、学校の先生が言う、決まり文句です。
学校に関する情報が何もないまま、それでも私は、普通級よりもましな教育が受けられるだろう。
そう、自分に言い聞かせて、ルカとともに、入学を待つこととなりました。
私が、もう少し、強くいろいろな要求をすれば、学校も聞き入れてくれて、見学をしたりできたのかも知れません。
でも、その頃の私は、とにかく学校の先生は偉い人だと思っていて、ただひたすら、「よろしくお願いします」と頭を下げるだけの、気の弱い母親でした。
学校の先生なんだから、ある程度のことはやってくれるだろうと、信じていました。
しかし・・・・・学校入学は、私とルカにとって、今までで、最もつらい時期の幕開けでした。
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