いろいろあった小学校の6年間とは違い、中学の生活は穏やかに過ぎたなあと思っています。
その原因としては、特殊学級の先生やクラスメートに恵まれていたことがあげられます。
しかしそれ以上に感じるのはルカ自身の成長によるものだと思います。
小学校の入学時には、席に座っていられない等の行動面の問題が目立ちましたが、中学になってからはほとんどなくなりました。
また、内面的にも少しずつではありますが、自分の行動を顧みて反省したりできるようになってきました。
中学1年の頃は、まだまだ自己中心的なところが多くみられました。
例えば、「協力しなさい」という言葉に混乱を覚え、「俺は絶対そんなことはしない」と言ってみたり、一度自分で決めたことを周囲の意見で変えるようなことができず、かたくななところが多く見られました。
自分の障害についても、周囲には絶対しられたくないの一点張りで、「アスペルガー」という言葉を聞くだけで、気持ちが動揺していました。
そのような状況だったので、中学1年の時は自閉症であるということは小学校からの報告で、担任もわかっていたようですが、「アスペルガー症候群」という具体的な障害名は担任にも伝えずにいました。
(1年の時のルカ担当の先生がその障害名を言うことによって、積極的に勉強してくれる可能性があれば、ルカに内緒で伝えたかもしれませんが・・・)
2年になりルカ担当の先生も変わって、ルカも先生には教えてもいいというので、初めてアスペルガー症候群であると詳しいお話をさせていただきました。
家族の中でも、私やルカパパ、ルカの3人の時は、障害についても気兼ねなく話せるようになりましが、妹のミミには隠したいという状態が続きました。しかし、中学2年になってからは自分から妹に話し(詳しくは近況報告"きょうだい"で・・)ミミとも自然に障害の話ができるようになりました。
告知からのルカの変化を見ていると、私がルカの障害を告知されたときの状況とよく似ています。
はじめは、ショックで考えられず、そして自分につけられた障害名にとても敏感になります。今まで知らなかった自分を愚かに思ったり、どうにかして治りたいという気持ちで焦りを感じたり・・・。それらしき特徴的な行動をすると一日も早くその行動をやめさせたい、やめたいと思ったり・・そんな心の葛藤を繰り返し、やがては少しずつ、自分の障害を受け入れていく心境になっていきます。
もちろん、ルカの場合は一つのケースにすぎないので、一人一人のパーソナリティーによって、様々な受け止め方はあるのでしょうが・・・。
ここで注意したいのは、告知による一発逆転はないということです。告知したから、一挙に子どもの状態がよくなるとか、そういうことは考えて欲しくないと思います。
彼は今、どの段階なのでしょうか?
この3年間、彼の心の中はどんな変化があったでしょうか。
中学入学時のかたくなさは少しなくなり、「協力」という言葉に対しての抵抗もみられません。
人の意見にも一応耳を傾け、相変わらずのマイペースの中に、周囲への気遣いがほんの少し見られるようになりました。
たとえば、ちょっと不満に思ったことでも「直接本人に話すと気分を悪くするから」と言って、ミミとのトラブルや、学校の先生の言動に疑問に思ったことなど、私に内緒で話します。
家族の中で暗黙にわかってしまうことが、ルカにだけは理解できなかったとき、「なんで俺だけ・・・やっぱり障害のせいなの?」とうつむいてしまうことがあります。小学校6年の時は、自分の子孫繁栄のため?結婚願望が強かったのに、今の自分は「もてないから」という理由で、結婚はしないと宣言しています。
彼は彼なりに、自分の障害を少しずつ受け入れることに懸命なのです。
あんなに好きだったドラえもんや、ポケットモンスターなどのテレビ番組は、中学生らしくないという理由で見なくなりました。
恋愛物のテレビドラマを見て、人間関係を学ぶのに一生懸命です。
一方では、得意なことがはっきりとしてきて、「鉄道知識に関しては誰にも負けない」と自信満々です。
どんな事でもいい、人から見たらそんなことか・・・と思われる事でも、これだけは得意だ!と思えることがあることは、彼の心の安定に大きな役割を果たしているようです。
それともう一つ、心の安定に役立っていることといえば、"キーパーソン"がいるかどうかという問題です。
心が不安定になったとき、どうしても自分一人では解決できないとき、相談できる誰かがいるか?ということです。
彼の場合は、それは母親である私ということになります。(自分ではとてもいいにくいのですが)
この信頼関係は当然のことながら、短い時間で築けるものではないということを、わかっていただきたいと思います。
しかしながら、いつまでも私一人を頼りに生きていけるわけでもありません。
私は中学校になってからは、できるだけ自分のことは自分で決めてもらうようしました。
自己決定ができるかどうかは、自立に向けて大切なポイントだと思います。
学校の交流のこと等、先生とルカに任せ、私はできるだけ口をはさまないようにと心がけました。
(もちろん、信頼できる先生にお任せしているという認識があってのことです。)
私の子どもであっても、彼の人生は私のものではありません。
今後様々なサポートを受けながらも、ルカはルカらしく、自分の道を歩いていって欲しいと思います。
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