中学は、ルカも自分の障害を知って皆との違いに気づき、障害を克服しようという気持ちと、なかなか皆と同じようになれない自分との狭間で孤独を感じた時期でもありました。
これを打開するのには、ルカと同じような障害のある子達との関わりしかないのかな? でも、ルカに友達づきあいなんてできるのかな?そんな不安を感じながらの高校の入学でした。
入学当初は、慣れない長距離の電車通学と学校での緊張で、朝ご飯が食べられなくなったり、こんなにひ弱なルカが一般就労なんてできるのだろうか?という不安もありました。
ちょっとしたことで、すぐに落ち込んでしまうルカ。精神面の弱さが課題でしたが、どうしたら強くなれるのか、私にもわかりませんでした。
しかし、高校3年間を終わって見ると、いつの間にかルカは強くなっていました。
その原因としては、やはり高校生活において、就職に向けての実習ができたこと。厳しいと思ったこともありましたが、その都度、ルカが自信を持てるようにフォーローしてくれた、先生達のお陰だと思います。
それと、障害があるのは自分だけではなく、みんなと一緒に同じ目標に向かって頑張ったという経験が、何よりルカの自信につながったのではと思っています。
ここで、改めて思うのは、自閉症であろうとなかろうと、人は一人では生きていけないということ。ルカの学校には、自閉症の症状の比較的軽いお子さんが多いのですが、それでも入学当初は、なかなか友達同士のコミュニケーションができなくて困っていた生徒が多かったように思います。
それでも、それぞれ関わり方はさまざまですが、人と関わって生きることをみんなが望んでいたのではないでしょうか? そして、高校3年間でその望みがかなった生徒がほとんどだったと思います。
それぞれの子供達に適した環境の中で生きることが、こんなにも人を成長させるものなんだなーと感じました。
しかし、一方では、なかなか学校という枠に適応できない生徒さんがいたことも事実です。
それは、それまでの学校との関わり方が尾を引いていたり、家庭環境の問題であったり、さまざまでしょう。
本人と学校と家庭と、どれも一つ欠けてしまうと、なかなか思うように前に進めないという現実もあるような気がしました。
就労に向けての学校の指導には、正直、そこまでやらないといけないのか?と疑問に思うこともありました。
生徒一人一人に障害があるわけで、なかなか頑張っても克服できないことも多いものです。そういう一人一人の特性に合わせた指導というものを考えてくれているのだろうか、ということを思ったこともあります。
その答えの一つが、卒業時のある先生のお別れの言葉の中にあったような気がしました。
「今までは、苦手なこともがんばろう、挨拶が苦手なことはわかってはいても、大きな声で挨拶をしよう、と先生はみんなに言っていました。でも、今までがんばったんだから、これからは、もう苦手なことはいいです。得意なことを思いっきりやって下さい」と、その先生はおっしゃったのです。
恐らく、先生達もホントは得意分野だけをのばして上げたいな、という気持ちもあったでしょう。この生徒にどこまでがんばってもらえばいいか、迷われることも多かったことだろうと思います。
それでも、社会に出て働くということを考えると、そうも言っていられません。実際に現場実習に出て行って、企業側から「こんな事ができない、あんな事ができない」と、おそらくは、親や本人の耳には入らないことを、先生達は聞いてきたはずです。障害があるから仕方ないじゃないか、そう言いたいところをガマンして、頭を下げて一人でも多くの生徒が就労できるようにがんばっておられたのではないかな?と思いました。
障害があるから仕方のないことと、環境を変える(周囲が配慮する)事によって改善できること、本人の努力よって改善できること、これから社会で暮らしていく上で、これらを見極めながら進んで行かなくてはいけないなと思っています。
思えば、小学校入学から12年間もルカは学校に通っていたことになります。
小学校入学当時の絶望から、ルカの将来を考えられなくなった日々。
この人も教師、そしてあの人も同じ教師という職業についている人なのか?と疑問を持たざるを得なくなった頃。
やっと自閉症の事がわかってもらえるようになったんだなーとうれしくなった頃。
いろいろありましたが、ルカのことをたくさんの人が考えてくれ行動に移してくれたこと。そしてルカもそれに応えるように成長してくれたことは、何よりの私の喜びです。
自閉症という障害を持つ子供達にとって、学校というところは、社会で生きていくための勉強を教えてくれる、とても大切な所です。
そこでは、自閉症という障害を理解して指導してくれる、先生達の力が必要なのです。
ルカの後に続く皆さんにも、学校でいい経験をたくさん積んで欲しいなと願っています。
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