・中学校入学


 1999年3月、ルカは小学校を卒業しました。
そして4月、中学校に入学しました。
式の日、満開の桜の木の下で、そして中学校の校門で記念写真をとりました。
ごく普通の入学式の光景ですが、私には格別の思いがありました。
小学校入学式のことを考えると、こんな日がくるとは、思ってもみませんでした。
小学校の時は、記念写真などとる余裕はなく、不安がいっぱいの状態での入学でした。
ルカは、入学の意味もわからず、走り回っていたような気がします。
私は私で、自分の子だけが特殊学級ということを意識して、妙に肩に力が入っていたような状態でした。
なのに中学になって、自分から、
「今日は、記念すべき日だね」
などと、言ってくれるのです。
中学校になることを、楽しみにしていたルカは、あこがれの制服を着ることができて、満足そうでした。

学校では、ルカのことを配慮してくださり、ルカが知っている子供がいるクラスを交流級に選んでくれたようでした。
学校では今まで、交流ということに消極的だったようですが、私とルカの希望を受け入れてくださり、今年度からは積極的に交流しようという方向になったようです。
始めは、ルカのことが先生方もわからず、特殊級の子が普通クラスでやれることがあるのか、不安だったようですが、ルカの一生懸命な姿を見て、認めてくれるようになりました。とはいえ、中学になると勉強も一段と難しくなります。
小学校と同じように交流はできません。
ルカは、社会と体育の交流となりました。
また、特殊クラスでも教科別の授業を組んでいます。
英語の授業もあり、あまり交流ということにこだわらなくても、特殊級で学ぶべきものはたくさんあると、私は思っています。
無事、中学に入学することができ、私が思った以上にルカの適応は早く、順調なすべりだしでした。

・中学校1年


中学入学から、順調な滑り出しで私も安心してしまい、ルカへの監視の目が行き届かなかったことがありました。それは・・・・・

ルカの希望で、中学の部活はやらないことに決めていました。
その分、自由な時間というものが増えてしまいます。
親御さんの中には、この自由な時間に、子供が悪さをしないようにという意味も含めて、部活をすすめる方がたくさんいらっしゃるようです。
しかし、ルカは放課後友達と遊ぶことはありませんが、自分の部屋でマンガを読んだり、地図帳を眺めたり!?、公園でブランコにのる(あまり中学生らしいとは言えませんが、今でも1番の気分転換になるようです)などして、余暇はそれなりに充実しているようでした。
また、入学の頃はサイクリングに凝っていて、しょっちゅう自転車で出かけていました。
はじめは、心配した私でしたがルカを信用し、あまり行き先などチェックせずに、外出させていました。
ある夜(その日はルカの行っている中学だけが、旅行の振替休みでした。)特殊級の先生から電話がありました。
「今日、K中学の方へ、ルカ君が自転車で行ったようですが、お母様はご存じでしょうか?」
K中学とは、ルカの中学の隣の中学で、ルカの小学校からもその中学に入る子がいました。
電話の内容によると、なんとルカが、中学1年の女子生徒を下校途中見つけて、しつこく自転車で追いかけ回したとのことでした。
その女子中学生は、ルカと同じ小学校の子でしたが、クラスが一緒になったことはなく、ルカだけが一方的に知っている子でした。
その子は、ルカに追いかけられ、泣きながら家に帰ったそうで、びっくりした母親が学校に通報し、K中学からルカの中学校へ連絡が入ったとのことでした。
幸い、小学校が同じで、ルカのことを知っていてくれたようで、今回は母親の方から注意してもらうと言うことで、話がすんだとのことでした。
私は、電話でことのあらましを聞きながら、気が遠くなるような思いでした。
早速、ルカにそのことを話しました。
ルカは、全然悪びれる様子もなく、その日のことを話しました。
相手の子が、泣いて家に帰ったと伝えると、初めて事の重大さに気づいたようでした。
そういえば、「ついてこないでって、言ってたなあ」
と、人ごとのように言うので、私もため息をつくしかありませんでした。

なぜ追いかけたのか、未だナゾの部分は多いのですが、相手の女の子と話したことはなく、接点と言えばただ同じ小学校というだけなのですが、ルカには親しさの度合いというものがまるでわかっていなかったし、こういうことをされたら、相手がどう思うのかも、全く予想できなかったようで、対人関係の障害を持っていることを、改めて思い知らされたような出来事でした。

また、ルカの成長著しいものがあって、親の私も安心しすぎていたことを、反省させられました。

余暇活動の一つとして、サイクリングは、ルカにとってかかせないものだったのですが、この出来事で禁止せざるを得なくなりました。

サイクリングが出来なくなったルカは、その分ブランコにのめり込んでしまったようです。
ある日、ふらふらになって公園から帰ってきたので、どうしたのか尋ねると、
「ブランコに乗りすぎて、酔っぱらってしまった」
とのこと・・・・・
おかしいやら、悲しいやら・・・・・

事件から、半年ぐらいは、サイクリング禁止でしたが、現在は、買い物など目的のはっきりしているときに限り、許可しています。
本人も、貴重な体験だったようで、もう2度とこのような事はしないと・・・・・・・
信じているよ、ルカ君!!

中学校入学早々、事件を起こしてしまったルカ君でしたが、学校では、問題となることもあまりないようです。
やはり、小さないじめはありましたが、学校の対応が早く、ルカも学校の先生を信頼しているようで、困ったことを私だけではなく、先生にも自分から言えるようになってきました。
中学校には、小学校と違って不良がいることが、ルカにとっては大きな驚きだったようですが、今のうちから、悪い人たちとは関わらない術を身につけるには、良い勉強の場かもしれないと、前向きに考えています。

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