多摩川歳時記目次に戻る
河原の秋の幕開けはヒガンバナだ。秋風が吹き始める9月半ばになると決まって真紅の花を咲かせる。自分自身で12ヶ月のカレンダーでも持っているかの如く。群生した花も綺麗だが、緑の茂みの中で川面に影を落とし、さりげなく咲いている花はまた格別な趣がある。
遥か上流の奥多摩あたりから流れてきたクルミの実が下流の河岸のあちこちで根付き大きく育っている。真夏は釣人や散歩の人達に木陰を提供してくれる。毎年実を一杯つける。でも、熟す10月末を待ち切れない人達が木に登り叩き落すことが多い。が、胡桃の木は毛虫も多く、必ず痛い目にあっている。
河原の秋は、やはり
ススキが似合う。河原一面の穂が秋風に揺れ、どこまでも深い秋の青空に
赤トンボが遊んだり葉陰で休んでいる様は正に日本の秋だ。郷愁を誘われる。
河原の秋は遅い。9月に入ってもまだまだ夏草が生い茂り、
むっとする草の香りが強い。
しかし、十五夜を過ぎ、お彼岸ともなると秋色が漂い始める。
子供達の夏休みも終ってしまい、あれだけ賑わっていた
河原でのバーベキューなど家族連れの姿がパッタリ消えてしまう。
そんな河原の秋をスケッチした。
1-3. 河原の秋