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春は生き物にとってウレシイ季節だ。3月に入り彼岸前後から河原の息吹を感じはじめる。陽光も徐々に眩しくなり、散歩する人・ジョギングする人も胸を張り出す。冬の間は見えていた富士山も化粧を落とし始めて恥ずかしいのか霞んできて、4月に入ると簡単にはその姿を見せてくれなくなる。
しかし、足元を見れば可憐な花が咲き始め、川面を見れば魚達が子孫を残そうと必死で産卵を始め、春はすべてのものがイキイキとしてくる。
1-1. 萌え出づる春
まづ初めに咲き出すのが「オオイヌノフグリ」だ。あたり一面が枯草の茶色の一画に緑の葉の中に薄紫の可愛い花を咲かせる。春が近いことを教えてくれる。
続いて「スミレ」が咲き始める。この花を見つけると、何故か口のなかで「春の小川」のメロディーが出てしまう。
春はどうしても「タンポポ」で代表される。どんな荒地にも春を告げてくれる。
でも、タンポポが咲き出すのは未だ早春、風が冷たい。
多摩川台公園の桜が松の緑の間に咲き、川面にピンクを映す。いよいよ花見の人達で賑わうこととなる。
土手の桜の淡いピンク、濃いピンクの桃の花、土手斜面に咲き乱れるナノハナ、土手下平地に群舞するハナダイコン。この景色は毎年見ていても飽きない。こういう場所を散策できるのは幸せなことだと思う。
桜花は遠景も良いが、一輪々々近くでじっくりと見るとその可憐さにうれしくなる。
「ハナダイコン」の花も派手さは無く目立たないがきれいだ。
「ナノハナ」はどうしても春を紹介するには欠かせない。群生すると春の香りを漂わせる。
春も本番4月も後半になり、気温が20℃近くなると「シロツメグサ」が咲き始め、こどもたちははなを摘んで首飾りや冠に編み上げて楽しんでいる。四つ葉を探しまわった幼い日を懐かしく思う人も多いと思う。
鳥や虫たちも気温が高くなるにつれて動き出す。てんとう虫が春を告げ、モンシロチョウが菜の花の中を忙しく飛び回る風景に会うと春だなぁ〜と感じさせてくれる。
春を感じるのは虫たちだけでない。人間もウズウズしだし、特に太公望のオジサン達はすぐに河原へかけつける。春の日差しを浴び、ヤナギの新緑に見守られながら浮子を眺めつつ、お魚さんへの挨拶にかけつける。
女性達はヨモギの若芽を探して河原の枯草をかき分ける。ヨモギ餅はこれも春の香りだ。
川辺の「クルミ」の木も新芽を出し、花房を垂らす。新芽を出すと同時に秋の実りのための準備をしている自然の営みには感心する。
今年もこの若緑が夏には更に葉を広げ、強い日差しに木陰を作ってくれるだろう。