・近況報告342

反抗心?

自閉症の方は、人は心で思っていることと実際の行動が一致している・・・一致しなければならないと思っているようです。
でも、実際はそうではない場合が多いですよね。
心の中で「この人嫌いだなー」と思っていても、表面上は仲良くしてみたり。
親や先生から言われたことが納得できなくても、とりあえず話を合わせて、その場をうまく切り抜けたり・・・ということは、日常的にあることです。

ルカの場合は、「人に対して失礼なことは、心で思っても口にしない」ということは、相手が嫌な気持ちになるから、という理由でわかっているのですが、人から言われたことが、心から納得してないと行動に移しにくく、とても困ってしまうようです。
そういう特性がどんな時に支障をきたすかというと、ルカの場合は職場での「上司の一言」ということになります。

ルカの仕事はだいたい3人グループで一つの機械の周辺の仕事をしています。
隣の機械の人が一人お休みだったりすると、ルカは隣の機械と自分の機械と掛け持ちでお仕事をすることになってます。
それは、通常3人が2人に減って大変になるので、隣を手伝うということで納得の上、やってました。
でも、ある日、隣の機械も自分の機械も3人ずついて、十分人が足りているのに(ルカはそう思ったのに)、掛け持ちをやれと上司に言われました。
とりあえず、納得しないまま手伝いに入ったけど、やっぱり人手は足りているようだと自分で判断し、掛け持ちをやめてたら 「なんで止めるの?」と、上司にきつく言われたとのこと。
だって・・・・と思ったけど、その場で疑問に思ったことをなかなか口にできないルカ。
上司はその時なんだかイライラしていたらしく、ガンガンいろいろ言われたけど、なんだか納得できないまま、渋々上司の言うとおりやったとのことでした。

その日、帰宅してから事の一部始終を私に話し、浮かない顔のルカ。
「あーあ、俺納得してないと仕事がうまくできないんだよなー。こんなんじゃ、納得できないこと言っている上司を恨んじゃうよ。まずいなー、反抗心をもったりしてはいけないのに」とルカ。
「いやー、職場の上司ってね。その時の気分次第で納得できないことをいう場合もあるんだよ。前にもいったけど、そういうことに対して反抗心を持つことは誰にでもあることなんだよ。心の中では"こんちきしょう!"と思っても、行動に出なければ気にすることはないんだよ」と私。
でも、ルカはいつもの通り 「いや、上司に対して心の中でも反抗心を持ったらいけないことだと思う。もうこれからますます反抗的な気持ちになったらどうしようかなー」と不安そうに話すのでした。
そして、珍しく「明日仕事にいきたくなくなったなー」というのでした。
いろいろなことがあっても、「仕事にいきたくない」と言ったのは初めてなので、私もちょっと心配。
自分が納得しないと動けなくなる特性であること。その場の雰囲気で理解することはなかなか難しいので、わかるような説明をして欲しいということ・・・もう一度勤務先に言った方がいいのかな〜などと考えました。

結局、次の日、その時のルカの様子が変だと一緒にやっていたパートのおばさんが気づいてくれたのか?
人数が足りていても、新人さんが入っていてなかなか仕事がはかどらないこと、通常の製品より手間がかかるものをやっていること、だからルカにも手伝って欲しいんだということを、丁寧に説明され、本人も納得したようでした。
やれやれ・・・。
納得してない仕事をやるのは確かに嫌なことです。でも通常は「なんでだよ〜」と思いつつ、まあ上司からの命令だし仕方ないか、と思ってやり過ごすことができるでしょう。
ルカの場合、「なんでだよ〜」心の中で思っているのに、心と別と行動をとることは、一般の人よりもとても難しいことなんだなと感じました。
と同時に、長い間ルカと一緒にやってるパートのおばさんは、そんなルカの気持ちをわかってくれたのかな?と、うれしくなりました。
・・・きっとルカがいかにも「納得できなーい!」という顔をしていたんでしょうね(笑)

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