繰り返し
自閉症の方は同じことの繰り返しが好きだとよく言われます。
ビデオのお気に入りの部分を何度も繰り返して見たり、お気に入りのギャグを何度もやったり、同じ質問を繰り返したりします。
アスペルガーの方も同様で、自分の興味のあることを相手の気分お構いなしに、会う度に延々としゃっべてしまったりして、それで友達が離れていくこともあるのではと思います。
ルカも例外ではなく、特に家ではお気に入りのギャグを何度もやって家族が辟易としてしまう、ということがあります。
でも、それはごく親しい人との会話のときで、仕事場等では抑制が利いていてそういうことはないようです。
この頃は、自分が興味のないことを延々と繰り返し聞かされると嫌なもんだなーと、逆の立場も味わっているようで、自分なりに周りが嫌な思いをしないようにという気づかいも感じられるようになってきました。
そんなルカがある日
「今度友達と会うとき、俺は友達にはっきり言うことにしたんだ」と、固い決意を私に話してくれました。
その友達は、会う度に同じ質問や同じ話題が多いので、ルカも返事をするのに疲れると言うこと。
「そうなの? でもルカだって同じ話好きだよねー。他の友達も同じ話をする人多いんじゃないの?」と聞くと
「それはそうだけど、内容が、俺や他の友達も興味のあることなら、みんなで一緒に笑ったりして楽しいけど・・・そうじゃないし。答えにくい質問もあるしねー、例えば時給いくらもらってるの?、とかさ。」とルカ。
ルカの学校では友達と時給の額を比べたりすると、少なくもらっている生徒がやる気をなくす可能性もあって?、時給の具体的な額などは他人に言わないように指導されてきていて、ルカは未だにそれをかたくなに守っているのです。
ところが、その同じ学校だった友達のはずなのに、彼はお金に対しての執着も強いところがあるせいか、会う度に聞かれてしまうとのことでした。
「そっかー、それじゃー正直な気持ちを言った方がいいかもね。きっとその友達はルカのそういう気持ちに気づいてないんだろうし」と私も答えたのでした。
これはなかなか難しい問題で、単純に「同じ話をしない」というルールならわかりやすいのですが(これも本人がどうしてしてはいけないのか納得してないと難しいですが)、同じ話でも相手も喜んでその話に乗ってくれるのならしてもよくて、つまりは相手の気持ち次第でルールは変わってしまいます。
私達なら、そんなに意識しなくてもできるのですが、自閉症の特徴を持っている人にとっては、至難の業なのかもしれません。
ルカだって、そういうことを理屈ではわっていても、ついつい気分が高揚している時は、そんなことも忘れて、しゃべりまくって失敗してしまうこと、よくあるのです。
何年か前までは、ルカに対してどんな風に話せばわかってくれるかなーと悩んでいた私と同じように、今、その本人が今度は友達にどんな風に話せば・・・と悩んでいるのが、面白くもありました。
「とにかくはっきり言いたい!」と意気込んで友達に会いにいったルカでしたが、
帰宅後聞いて見れば
はじめは「今日はそんなに同じ話もしなかったから、言う必要がなかった」と答えていたのですが、しばらくして、やはり同じ話はしていたらしく
「だってさー、同じ話をする時の友達の顔がとっても嬉しそうなんだよなー。それ見てたらなんだか言えなくなっちゃってサー」と言うのでした。
なるほどー。そのお友達はルカよりちょっとマイペースの強い方なので、言ってもわかってくれるかな〜と、
実は私も心配してたのですが。
嬉しそうな顔している友達を見て、がっかりさせるようなことは言えなかったというルカ。
なんだかほほえまくして、その夜私は何度もルカの言葉を思い出して、にやけてしまったのでした。
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