気遣い
会社からの帰宅後のいつもの夕食時、
「今日はちょっと恥ずかしかったー」とルカ。
何が恥ずかしかったかというと、職場での休憩時間、ルカは一人でぼーっとして骨休みをしているそうですが、そのかたわらで、正社員と思われる人が、休憩をとらずに残務整理に追われていることがあるそうです。
ルカはいつもそれを横目に見ながら
「どうしよう。俺だけ休憩していていいのかなー、手伝わなくていいのかなー」と、休憩中も落ち着かない気分になっていたそうです。
なので、今日は思い切って手伝おうと思い、社員の人がいないときに自分の判断で、社員の人がやっていた仕事の続きをやりました・・・が、それはやり方がまずかったらしく、戻ってきた社員の方がそれを見てびっくり。
「あーあ、やらなくていいよ〜」と言われてしまったそうなのです。
「かえって、迷惑かけちゃったよな〜、あー恥ずかしい〜」とルカ。
私が「手伝いましょうか?、って聞けばよかったのに」というと、
「そうそう、そうなんだよね。でも、やらなくていいよ、って言われたから、これからは気にしないで休憩とることにした」とルカ。
ルカの言うとおり、それがいいのかなーと私も思いました。
たぶん、社員とパートの人との休憩時間の扱い(時給とそうでないことの違い)は、微妙に違うのだろうし、パートのおばさん達も手伝っていないというので、ルカはパートのおばさん達と扱いが同じなのですから、そちらに足並みをそろえた方がよさそうです。
恥ずかしい思いをしてルカも少し落ち込んでしまったようですが、「でも、この頃は失敗してもあんまり後に引きずらなくなったから大丈夫」というルカの言葉に、私も一安心です。
それよりも、ルカが自分の休憩時間にもかかわらず、手伝った方がいいのかな?という思いに至ったということの方が、私には意外でした。
以前のルカだったら、休憩時間はどんな状況であれきっちり休憩するのが当然と考えていたように思います。
これは、自閉症の人の特徴でもありますが、周囲がどんな状況であれ、決まり事は変えられないのです。
でも、実際働いてみると、世の中そんなにきっちりはしていなくて、休憩時間でも時には返上して働かなくてはいけないこともあります。
ルカもそういう状況を何度か経験して、休憩せずに働いている人を見て
「俺だけ休憩していて悪いなー」と感じることができるようになったのは、、大きな進歩だなーと思いました。
また先日はこんなことも。
休日の夕食時。ルカは部屋にいて、配膳等をルカ以外の家族でやり終えたところにルカが食卓に来ました。
「俺、手伝わなかったから、食後の食器洗いは俺がやるよ」と自分から言ってくれたのでした。
これも、ちょっと前のルカにはなかった行動です。仮に食器を洗うと言っても、当然のように自分の食器だけを洗うのがルカでしたから。
ちょっと遅いけど、やっと周囲への気遣いを見せるようになったルカです。
私は、彼が自閉症だいうことを考慮して、気が利かない行動をとってもあんまり本人を責めるようなことは言って来ませんでした。
なので、こういう行動がでることはある意味、諦めてもいたのですが、ここへきて、ルカの中でなにか変化があったようです。
どうしてなのかよくわかりませんが・・・いろんな経験をして、大人になってきたということなのでしょうか・・・。
ところで、この「気遣い」ということで、ちょっと蛇足のお話。
自閉症の人の中には意外にも「気が利くわね〜」と言われる人がいます。
例えば、ドアは全部閉まっていないと気が済まない自閉症の人(ドアが閉まっていることにこだわりがある)が、空いているドアを律儀に閉めているのを見て、自閉症のこだわりだとは知らない方が
「あら、気が利くわね〜」と、誉めて下さることがあるのです。
いや、ただ単にドアにこだわりがあるだけなんだけど・・・と苦笑いした経験がある親御さんも多いかもしれません。
自閉症のこだわりをなんとかしたい、と思ってはいても、なかなかなくならないものです。
このこだわりが社会的に認められるこだわりに向いていくと、それが長所にもなります。
心情的には気遣いということがわからなくても、こだわりをうまく利用して、「気が利く人」になれる可能性もあるのかもしれませんね。
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