・近況報告310

服従

ルカはこの頃、仕事のことでいろいろ考えることが多いらしく、またまた職場の話です。
ミミがバイトでいない、二人だけの食事時間、ルカはまた「相談したいことがある」と言って語り出しました。

職場の人に、次はコレをやってねと指示を出される。
そろそろ指示されるなーと思っていると、案の定「ルカ君今日はこれもお願い」と言われる。
その時に心の底で、「くそ〜、なんでだよ〜」と、素直に上司の言葉を受け止めきれない自分がいる。
もちろん、行動上では素直に「ハイ」と言って、仕事もしているけど、心では反対のことを考えている。 これは、とってもいけないことなんだ、表面上だけでなく、心から上司に従う気持ちを持たなければ行けない。
いつしか、ルカはそう思いこみ、努力しているけどどうもうまく行かない。それどころか、不満はますます募り、いつか爆発して大声でどなってしまうのではないか?と心配になってくる、
とまあ、こんなような話でした。

そして、ここからが面白いのですが、その理想とする精神状態をルカは「アルティメット服従」と名付けているというのです。
アルティメットというのは英語で "ultimate" のことだそうで、「究極の」という意味です。
ルカはどっからそういう英単語を覚えたかというと、彼が今凝っているテレビゲーム、ドラゴンボールによく出てくるらしいです。
ゲームのながれから、辞書を引くでもなく、その意味が「究極の」だとわかったそうです。
そして、自分でそれに「服従」を付け足し、職場での自分の精神状態はこの「アルティメット服従」で行こう!と、自分に課していたようです。

でも現実の自分はなかなかそうはいかない、そのギャップにルカは悩んでいたようでした。

私からは
いわゆる、「顔で笑って心で泣いて」ということは、人間にはよくあることで、誰しも表面上の態度と心の中が同じではないこと。
上司の言葉であっても、嫌な仕事の時は逆らいたくなる気持ちは自然のことで、気にする必要はない。
実際の行動と気持ちは違っても、この場合はどういう態度をとるのがいいのかを考えて、使い分けしていくことが大切だ。
気持ちまで、服従させようなんてことを考えると、ルカが心配しているように、心の状態が悪くなって爆発してしまう心配もあるので、それはやめた方がいいよ、
と話しました。
まあ、要するに「ほどほどに」ということと、表裏がある人間の感情というものを理解していこう、という話をしました。

この二つ、どちらも律儀な自閉症の人には大変難しいことなのですが、そのメンタルトレーニングができてないために、ある時爆発してしまって大事になってしまうケースも考えられます。

話し終わって、ルカもすっきりした様子でこう言いました。
「これは、友達にも相談できないことなんだよね。友達は職場の上司の愚痴も平気でいうし、俺が「服従」なんて考えているのを知ったら、大笑いされるに決まってるもの」と。

そうだなー、自閉症の人の独特な(真面目すぎる)考えを理解してもらうのって難しいしよな〜。
誰にも言えないで、溜め込んでしまうこと、多いのかもしれない。
今回のことも、私はルカとのつきあいが長く、自閉症の特性がわかっているから理解できたけど、いきなりこんな話だと、みんな???になってしまうかも。
だからこそ、その考えに共感して、親身になってくれる人が必要なんだなーと、感じました。

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