残業
ルカの勤務先では、残業するほど仕事は厳しくないのですが、帰りの送迎バスの発車時刻が遅いため、所定の勤務時間より15分ほど残業すると、バスの発車にちょうどいい時間になります。
なので、よほど暇でないかぎり後かたづけ等やって、ルカも毎日ちょっと残業してました。
先日、上司に声をかけられ
「毎日残業っていうのはなるべくやめて欲しい、ほらっ、こんな具合だから・・・ そうは言ってもみんな残業しちゃうんだよね〜」と言われたそうなのです。
そうか・・・毎日残業はだめなんだ、ということはわかっても、「こんな具合だから」というのはどんな具合?と、疑問に思うルカなのでした。
それでいつものように、深刻な顔で「相談があるんだけど・・・」と、私に聞いてきました。
なんで残業がだめなのか? 別に残業しないで早く帰れるんならそれでもいいけど、バスを待って帰ると結局残業してもしなくても同じ時間だし・・・ まあ、帰りだけ路線バスで帰っても片道100円だし(障害者割引で乗れるので)、それでもいいけど、送迎バスの運転手さんに「今日は乗ります、今日は乗りません」って毎日報告しなくちゃいけないのかなー??等々。
いろいろ疑問はあるようです。
まず「こんな具合」を説明しないといけないなと思い、「こんな具合」っていうのは、きっと「残業するほど、締め切りに追われている仕事はないでしょ?」という意味だと説明。
これはルカも納得。「うん、残業っていってもゴミを捨てるだけだからね」と。
「でも、俺だけ言われちゃったのかなー」と、新たな不安。
「いや、"みんな残業しちゃうんだよね〜"っていうのは、きっと他のパートのおばさん達も言われてるんだと思うよ。でも、送迎バスのこともあるし、残業した方が得だから、なかなかやめられないよね」と言うと
「あーなるほど。そうそう、時々バスの時間がもっと早ければいいのに、って愚痴ってるよ」とルカ。
会社の景気があんまりよくない場合は、残業規制が出るのはよくある話で、ルカの上司のそのまた上司からのお達しで、ルカに声をかけた人も、上からの通達で言いにくいのを仕方なく言っているんだよ、と説明しました。
(不景気なのはちょっと心配ですが・・・)
これで毎日は残業しない、ということには納得。じゃー、何曜日に残業すれば良いのか?という新たな疑問。
それは、その日の状況によるので、あらかじめ決められないことです。状況によって臨機応変に・・・という、これまたルカにとっては難題です。
それから、バスに乗る乗らないは、どうやって報告するか?
いろいろ話し合って、結局一応の目安として、火曜日と木曜日は残業をやらない方向で検討する・・・でも、状況によって変わることもあることは承知しておくこと。
バスのことは、乗ったり乗らなかったるすることがあるので、ルカを待たなくても時間になったら出発してもらっていい、と、運転者さんにあらかじめ言うこと。
ということで、一件落着しました。
はじめは深刻な顔だったルカも、解決の方法がわかり、表情も明るくなりました。
仕事そのものの内容というよりは、このようなコミュニケーション能力が必要な事例は、勤務先では日常茶飯事ですよね。
私たちが何気なくこなしてしまっているものですが、自閉症の人にとっては難問です。
なんでも相談できる人の存在が不可欠であることを、今回も感じました。
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