愚痴
ルカは学校を卒業してからというもの、なかなか友達と会う機会も少ないので、メールでやりとりしていることが多いです。
メールの得意な友達の一人、○君はルカより一つ下で自閉症のお仲間です。
そのせいか? ときどきわかりにくい文章のメールを送ってくることもありますし、たいてい、一方的に愚痴を送ってくることが多いのです。
ルカも、職場での不満とか、はじめはそのお友達に同情してメールを読んでいたのですが、基本的に公明正大なルカのこと、いくら友達の愚痴でも、「それは○君がいけないんじゃーないのかなー」と思うことも多々あって、メールの返信に悩んでいることがあります。
人の気持ちを読むのが今ひとつのルカでも、「それは○君が悪い」なんてメールを出したら、相手もがっかりするのがわかるらしく、かといって、自分はそうは思っていないのに、○君と一緒に愚痴をいうのも気が引けるというわけです。
例えば、母親と一緒に歩いていて、踏み切りで電車がとおりすぎる時、つい電車の車両の数を口に出して数えてしまった。
そしたら母親が「もう社会人なんだから、独り言をブツブツいうのはやめなさい!」と怒った。という内容。
ルカも独り言の癖はあるので○君の気持ちもわかるのですが、人前では言わないように自分も気を付けているので、○君も気をつけて欲しいなとも思うわけです。
「どうしよう、なんて返信しようかなー」と考えたあげく「そうか、そういうことがあったんだね」と、返信。
私は内心、それじゃー、相手は納得しないかも・・・と思っていたら、案の定、すぐさま○君からメールがきて
「たったそれだけ〜?? もっとなんかないの?」みたいな逆ギレメールが返って来たのでした。
「もう、なんで俺が○君に怒られるんだよ〜?」といいつつ、いろいろ考えた結果、今度は
「そうか〜、つらかったねー」と返信。
ふむふむ、今度は納得してもらえるだろうと、私も安堵したのでした。
愚痴に対するお返事は、なかなか難しいですね。
○君は品行方正の好感の持てるお子さんなのですが、自分が正しいと一度思いこんでしまうと、なかなかその考えを改められないところがあります。それはルカも知ってはいるのですが、ルカはルカで嘘を付くのが苦手な人なので、一緒に愚痴をいいあえば相手は納得してくれる、とわかってはいても、なかなか心にもないことを軽々しく言えないのです。
そういうわけで、やっと、相手も自分も納得できそうな相づちを考え出せて、一安心なのでした。
・・・と思ったら、またまた○君からメール。
前の話は○君の中では終わった話のようで、話題は次の愚痴! 今度は職場の先輩の納得できない行動に関してでした。
○君も世の中納得できないことばかりで、大変だなー。
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