・近況報告282

手抜きとペース配分

最近のルカは、職場ではお仕事経験一年が過ぎたこともあって、少しは周りのことが見えるようになりました。
ルカの仕事は一つの機械に対して、3.4人がチームになって、その周辺の処理をしていくのですが、例えば、隣の機械の人が一人休んだりすると、二つの機械を掛け持ちして作業を行うことがあります。
以前は、「掛け持ちしてね」と言われてからやっていたようですが、この頃は、自分で「今日は掛け持ちだ」とわかるようになって、周囲から指示を受けなくても自分からやっているということでした。
それから作っている製品の種類によって、自分の仕事内容が変わることもわかってきたらしく、そういう時も言われなくてもそちらの機械に移って仕事をしたりしているようです。
この間は、いつもルカがやっている仕事を、若い女性の方が代わりにやったらしいのですが、少々力仕事になるため、その方にとってはきつい仕事だったらしく 「いつもよくやっているね〜」と誉められたとのことで、嬉しそうに私に報告してました。

そんなこんなで随分と仕事にも慣れてきたはずなのに、いまだにわからないことを職場の方に聞くのは緊張するらしく、時々家に戻ってから私に確認を求めることがあります。
「勝手に自分で決めて仕事していてよかったのかなー」とか、後々迷うことがあるようです。
「もし、それで何か不都合があったら、職場の人が言ってくれるはずだから大丈夫だよ」 と言うと、ルカも安心するようです。

また、慣れてきた状況ならではの心配もあります。
「この頃、いつも一生懸命やらなくても、この仕事はちょっと手を抜いておいて、後でまとめてやればいいや、とか思うことあるんだよね〜。でも手抜きは、サボっているみたいでヤバイのかなーと心配になってくる」とルカ。
ふむふむ。でも、いつも一生懸命100%の力でやっていたら疲れるので、適当に力を抜くことを覚えるのも、長く仕事をやっていくコツです。
「それは決してさぼっているとは違うと思うよ」とルカに話しました。
「そうだ、"ペース配分"ってことなんだよね。 俺はいつもはじめからとばしすぎて後で息切れしてしまうことがあるから、ペース配分が大切だって、実習の頃から言われてたよね」と、ルカも納得なのでした。
そう言えばそうでした。高校の実習の頃は、本人は一生懸命ではりきってやるのですが、後で疲れてしまって、作業効率ががくんと下がってしまうということが、彼の課題でもありました。
その度にペース配分を考えようと言われて、いろいろ試行錯誤したのですが、なかなか本人にとってはわかりづらいことだったようです。実際に1年職場で働いてみて、やっとそのコツがわかりつつあるかなーという感じです。
長く仕事をやっていく上では、そういう「いい加減」を身につけることも大切だと思うのですが、自閉症の人にとってはとても難しいことですね。

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