調整役
本題に入る前に今週の笑える話を一つ。
ルカの会社では、駅から工場まで送迎バスが出ており、ルカも毎日それに乗っています。
帰り、送迎バスに乗り込んで運転手さんがくるのを待っていたら、いつもはついている冷房がついてなかったとのこと。
一緒に乗っていたおばさんに「クーラーつける?」と聞かれ「はい、僕がつけます」と張り切ってスイッチを入れたとのこと。
しばらくして運転手さんや他の人たちも乗り込んできて
「なんだか、このバスあったかくない? 」という話になり、冷房ではなく暖房がついていたのことが判明。
そうなんです。ルカ、冷房と暖房のスイッチ間違えちゃったんです。
「だれだぁ〜」という声とともに笑いが起こってその場はおしまいになったそうですが、ルカは「誰?」の質問に名乗りでることもできないで固まっていたとのことでした。
でも・・・真実は一緒にいたおばさんは知っていたわけで、次の日なにげなーく、「冷房の付けかた教えてあげる」と運転手さんに言われ、正しい付け方を教わったようです。
「バレバレだったんだよねー」とルカ。そりゃそうです。でも、そのことには触れずに翌日教えてくれるところに、従業員の方々のやさしい気遣いを感じます。
さて、そんなルカの楽しみは週末の友達との遊び。
でも、友達もそれぞれ働いているわけで、土・日のどちらに遊ぶか、どこの家にいって遊ぶかなどと、いろいろ調整が難航することがよくあります。
どうやら、みんなの都合を聞いて調整する役割がルカのようで、なんでも私に報告するルカは、その調整の進行具合を逐一報告してくれます。
そしてこの頃思うのは、ルカも相手の立場に立った考えができるようになってきたことです。
例えば、以前は自分は土・日休みで、土曜日にいっぱい遊んで日曜日はゆっくりしたいという気持ちが強かったため、何が何でも土曜日、ということがよくありました。
ある日のルカ。
「今回は、みんなに都合を聞いて多数決で決めようと思う」と言いました。うん、それはいい方法。でもその多数決の原理だと、いつも遊べなくなってしまう友達も出てきます。
この多数決の原理は、自閉症の子がとても好きな原理ですよね。誰もが公平でわかりやすいためだと思われます。
でも、多数決の原理だけでは、調整ができないこともあります。
あるお友達がその原理でやるといつも参加できないことになる・・・それはかわいそうだから、原理を曲げて・・・という心情が必要になると、自閉症のお子さんの中には、納得できない人が多いのです。
集団遊びの中で自閉症のお子さんがネックになってしまう一つの原因は、そんなところにあるかも。
結局、ルカは多数決の原理よりも、いつも土曜出勤で参加できない友達の都合を優先させ、他の友達にも連絡してわかってもらったとのことでした。
いつもいつも、ルカが調整役で、いろいろ気をつかって疲れないかなーと心配でもあったのですが、どうやら、いろいろ調整して一件落着した時の喜びもひとしおの様子。
今度の集まりは二ヶ月ぶりなので、とても楽しみにしているようです。
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