・近況報告225

実習終了

先週ルカの現場実習が無事終了しました。
そして、ルカと私でいろいろ悩んだ末、今回の企業への就労は見合わせることにしました。
この時期、このような結論を出すことは、これからルカが路頭に迷うことになるので、大変な決心が必要でしたが、今はとてもすっきりした気持ちです。

就労を見合わせた理由としては、
・実習先の企業理念と、私とルカの気持ちがあわないこと。
・ルカが持つアスペルガー症候群という障害の理解を得ることが難しかったこと。
の2点が上げられます。
実習先の人事担当の方とは、今まで何度かお会いしお話を伺ってきたのですが、「学歴や年齢を問わず実力で評価する」というお考えの方で、それは障害者に対しても同様のお考えの方なのが、はっきりしました。
障害者でも差別はしない、平等に接したいという、一見誠意ある対応のように思えますが、それは裏を返せば、ルカを障害者として扱ってくれないということなのです。
思えば、2学期からの実習内容を考えると、体力、ある程度の知的能力、作業能力、コミュニケーション能力と、いろんなことを必要とされる仕事を次から次へ要求されていたように思います。養護学校に通っている生徒に対して随分といろいろな仕事をさせるものだなーと私も不安に思ってはいました。
それでも、本人が仕事を気に入ったと言っていることと、何よりもルカがその仕事をこなせているように見えたこと、職場の方も親切に教えて下さっていたこと等々で、障害者雇用ということでなくてもやって行けるのかな?という、期待を抱いてしまいました。
それでも、仕事の内容はルカにとってはかなりきついものだという認識はあったので、もし就職できたとしても、1年もつのかな〜、長続きはしないということを覚悟しておかなくてはいけないなーとは思っていたのです。
それと、実習先の方が、障害者雇用ではなくルカを雇用する意向となった原因としては、やはりルカの障害のわかりにくさがあったと思われます。
ルカは一見すると、とてもしっかりした子に見えるらしく、養護学校に通っているなんて思えない、障害なんてないのではないか?と見えるらしいのです。
そして、それは決して喜ばしいことではなく、これだけ普通に見えるのに、いざ仕事をやらせてみると、期待通りにできないのは、本人の努力が足りないからではないか? 甘やかされて育ったのではないかという誤解を常に生んでいるのです。
それは、ルカと私がアスペルガーという障害を知らない人から今までも言われてきたことであるし、それを今回もまた企業の方に指摘されてしまいました。

実習の反省会では、2週間のルカの仕事量の実績を具体的な数値ではっきり言われ、就職したとしても現在足りない部分を試用期間中に達成できなければ、雇用は打ち切るということ、それでも良ければ雇用を考えてもいいというような趣旨の発言をされました。
そのできない部分というのは、ルカの障害の部分にかかわることが多かったので、今後努力しても企業側の期待通りできないものだという判断を最終的には、私がしたことになります。
実習先では最終的な結論を1週間後に出したいということでしたが、反省会が終わって帰る道すがら、これは結論を待つまでもなくお断りしようと思いました。
足の不自由な人が松葉杖をつくことが当然のこととして許されるのに、なぜ、ルカの障害についてわかってもらえないのだろうと、声を上げて泣き出したくなるのをこらえるのに必死でした。

でも、ルカはどうだろうか、気に入った会社だと言っていたルカに「それでもがんばる」と言われたらどうしようか、と思いました。
反省会の日、実習先から帰ってきたルカは、やはり動揺して「どうしよう、断られたらどうしよう」と落ち着かない様子でした。実習があと1日残っていたので、本当は実習が終わってから結論を出したかったのですが、動揺が長く続くのもいけないなーと思い、「ルカ、こっちから断ってもいいんだよ。ルカは実習中一生懸命やったでしょ。これ以上のことを就職してからできると思う?」と、言って見ました。
するとルカは「えっ? 断ってもいいの?・・・・ そうだよ、オレはこれ以上はできないなー。でもせっかく実習を受け入れてくれたのに、こっちから断ったりしたら悪くないかな?」というのです。
そんなことはないということをルカに話して、それから二人で今回のお話は縁がなかったものと思って断ろうという結論に達したのでした。
「断るって決めたからって、明日の実習やめるっていわないでよ」と私が言うと、「それはもちろんだよ。実習は実習だからさ」とルカ。そして、次の日も元気に実習先へと向かったのでした。
そしてその夜、ルカはとてもすっきりした顔で帰ってきました。
「就職はできなかったけどさ、オレは一生懸命がんばったから悔いはないよ!」と、ルカはきっぱり言ったのでした。
そうかー、そんな風に思えるんだ。君はホントに一生懸命だったんだね。
今回のことはとても残念なことだけど、そんな風に思えるようになったなんて、結果はどうであれ、高等養護で学んだ3年間はむだではなかったよね。私は、心からそう思いました。

反省会で言われたことを今回いちいち書くのはやめておきます。
ただ、一つだけ私は言いたい! 実習先の人事担当の方は、「努力してナンバーワンを勝ち取る気持ちで働いて欲しい、オンリーワンよりナンバーワンだ」と豪語しておられました。
きっと、貴方はそうやって、自分が今の地位を勝ち取ったんだと思っているのでしょう。
いろんなものを犠牲にしても競争に打ち勝つことが美徳だと思っていることでしょう。その気持ち、わかります。私もかつてそのように思ったことがあるからです。
でも、それは違うと今は思えます。
貴方はたまたま、日本という平和な国に生まれ、五体満足な体を授かっただけに過ぎないのです。貴方がたまたま成功したことによって、陰で苦しい思いをしている人がいるかもしれない、そんなことも気づかずにそのお年になるまで生きて来られたなんて、なんておめでたいことでしょう。
そんな貴方に、ルカと私の魂を売り渡すわけにはいかないのです。


さて、気持ちを切り替えて、今後のことを考えていかなくてはなりません。もう後がないので何かとバタバタしそうです。 進路のことは、まだまだ不確定要素が多くて、はっきり言えません。しばらくは違う話題で近況をUPしようと思っています。

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