・近況報告196

実習終了

4週間の長きにわたる実習はめでたく終わりを告げ、通常通りの学校生活が始まりました。
月曜日は、学校での事後指導。感想を聞くと「もう、あと少しで高校も終わりだよね。1年の頃に戻りたいなー、なんでこんなに早いんだろ?」とのこと。
高等養護では、校内の作業実習も含めて、3年間で9回の実習をします。
それを階段に例えて、頂上までがんばろうということを1年の頃から話されているわけです。
3年になったルカは、今回は7段目の階段を上ったわけで、あと残すところ2段。
1年の頃のルカはちょっとしたことで動揺して、精神面での弱さを私はとても心配していました。
でも、その段階を経て、こんなにも強くなったのか、と、その積み重ねの大切さを実感しました。

初めて単独での企業実習。
精神的に動揺したりしないか?と心配ではありましたが、一言で言えば「頼もしくなったなー」です。
細かいことはいろいろありましたが、一人でやれる! という自信がルカにもついたのではないでしょうか?
それと、仕事の中身はともかく、従業員の皆さんとの温かい交流が、ルカにとっては良い思い出になったようです。
ルカを直接指導して下さった上司は、「実を言うと、僕は学校の先生になりたかったんだよ」とルカに打ち明けてくれたり、何かにつけ、仕事以外のところでも、ルカの緊張感をほぐそうと気を遣っていただいたようでした。
他の従業員の方との交流もルカにとって、とても良い思い出となったようで、これは私の予想外のことでした。

さて、仕事については、お店の裏方ということで、仕事をさせてもらい、裏方業務、いわゆる、お店の商品棚に商品を並べたり、業者から運ばれてくる園芸用品の土を所定の位置に運んだりという仕事は、ルカにとってはとても面白い仕事だったようで「いろんな仕事があって、面白い」と言っていました。
一通り説明をされたら、後は自分のペースで仕事ができるというスタイルもよかったのだと思います。
2年の3学期に行った段ボールの組み立ての実習は、朝から晩まで同じ仕事だったワケですが、ルカにとってはその仕事に比べるとはるかに楽だったようです。
一般に自閉症の人は変化のない仕事を好む人が多いのですが、ルカの場合は多少変化のある方が「やりがい」を感じられるようです。
しかし、お店の裏方と言っても、商品を並べている時、お客さまに「○○はどこ?」と、声をかけられることがあります。
たまーにだったらよかったのですが、一日何度も声をかけられることが多かったそうで、それはもう懲り懲りだーということでした。
ルカは、慣れている相手とだったら、特にコミュニケーションに障害があるという配慮がなくても、見かけは話せるのですが、初対面の人とは全く話せないのです。
お客さまは、その都度初対面なわけで、これに慣れるというのは、ちょっと無理かもしれません。

ということで、今回の実習、ルカのできること、できないことがはっきりした実習だったのかもしれません。
対人関係が苦手と言っても、毎日一緒に働く従業員の方々とだったら、慣れればうまくやれるかもしれない(周囲が彼に障害のあることを承知の上で接してもらうことが前提ですが)・・・でもやはり、客商売はできないということです。
それと、体力的には少々きつくても大丈夫かもしれないというところでしょうか。

実習が終わりに近づいたとある日、「あー、これで給料もらえたら最高なのになー」とルカ。 そういう気分、就職して、是非味わってもらいたいなー。

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