年上
今週は年に一度のドクターの診察がありました。
ルカは、この診察日に思い切ってあることを言おう! と、決心していることがありました。
それは「センターの先生は、俺のことをすごく誉めてくれて、センターに通ってるなかでは年上で、みんなに教えてあげる立場だって言っているけど、ほんとの俺はまだまだ未熟者だから年上だといばるわけにはいかない・・・だから、鉄道愛好クラブの時に年下の子に写真の説明したりして、お兄さんぶるようなことはしたくない」ということでした。
鉄道愛好クラブは、センターで鉄道好きの子が参加しているサークルなのですが、ルカはそのサークルに時々お呼ばれして、後輩達に自分の撮った写真を披露したりしているのです。
写真を見せるまではよかったのですが、それで「みんながルカ君にあこがれているんだよ〜」なんて言われたりすることに納得できないと、以前からいっていたのでした。
私は、それは10代の若者によくある心理なのではないかなーくらいに思って、「あー、そういう気持ちもわかるなー」などと、かるーく流していたのでありました。
それと、ルカは来年就職ということを目前に控え、高等養護の先生に「君たちはまだまだ社会に出ればわからないことばかりで・・・」と、要するに社会に対して謙虚であれ!みたいな言われ方をしているので(それはそれでとても大切なことですが)、自分はまだまだだと思いこんでいるんだろう・・・と思っていました。
でも、それは社会に出たらの話で、実際のルカは、センターの中で年上であるし、高校でも3年ということで、年上ぶることになんの問題はないのですが、ルカには一つの思いこみを全部に適応してしまうという、思考回路が昔からできあがっていて、普段の会話でも妙な印象を与えることがあるのです。
例えば、今はさすがに言わなくなりましたが「新幹線は速く、俺はそれより遅い。故に俺は足が遅い」などということを言っていた時期がありました。
ルカの中では物差しは常に一つで、人の走る速度も新幹線の走る速度も同じで、相対的にものを考えるということが苦手なのです。
だから、私たちが考えている「年上」という言葉の概念とルカの考えている「年上」の概念が微妙に違ってしまっているとも考えられます。
・・・と、ルカが年上と言うことに対して素直に受け止められない理由を、@10代特有の照れ?劣等感?と、A相対的なものの考えができない、私はこの2点かなーと思っていました。
診察の当日、ルカはとーっても言いにくそうでしたか、なんとかドクターに伝えることができました。
そしてドクターのお答えの中に、今まで私の考えてなかった答えがありました。
ルカは、この「年上ぶることができない」ということの他にも、どうも「俺はまだまだ、だめだ」といろんなことに自信のもてないところがあります。
ドクターの質問「妹さんとの関係はどうかな? 自分はお兄さんだと思う?」
ルカ「いや〜、年は上ですが、妹の方がしっかりしているから・・・」
どうも自分が兄だという自覚はなさそうな答えでした。
そりゃそうです。私、ルカに対して「お兄ちゃんでしょ」的な言葉がけはしてませんでした。
私は、ルカがお兄ちゃんだと自覚できないことはあんまり気にならなくて、むしろ「自分をよく知っている子だなー」と思っていたのです。
ルカが年下の子の扱いに対して、苦手なことは知っていました。それから、年上でなくても人に対して強く出れない性格だなーと思っていました。
それはアスペのコミュニケーションが苦手ことからくるのだろうくらいに考えていました。
でも、よく考えて見ると、アスペでも年下の子の前ではお兄さんらしく振る舞い、自分がそうすることによって年上だという優越感で、自信を深めている子はいます。
そういう子よりも、ルカは自分自身をよくしっている子なので、そう単純に喜べないんだろうなと、思っていました。
なので、ここへ来て妹との関係を言われたのは、ちょっとイタイところをつかれたなーという気分でした
今更、妹との関係を変えて行くのはむずかしそうです・・・だけど、ルカの中に自分は兄であるという自負の念が育ってないことも事実ですね〜。
そういうこともあって、他人に対して自信をもって接することができないルカができあがったのかもしれません。
一つのことから、いろんな原因が考えられるものですね。
ルカが自分に自信がもてなかったり、誉められても素直に喜ばないことを、時期が過ぎればなんとか・・・と思っていた私ですが、もう少し積極的になった方がいいのかな?と思いました。
思春期と言われる10代、いろんな心の葛藤があり、私自身、そのむかーしを思い返してみると、ルカ以上に、誉められても単純には喜べなかったし、自分のことを好きになれなくて劣等感の固まりでした。
学校ではよく「自分を好きになろう」「良いところを見つけよう」的な指導をしているけど、「だって、10代のこの時期に自分を好きでいられるはずないじゃない?」と反発を感じていました。
だから、ルカのこともミミのことも、そういう時期なのよ〜と高をくくっていたのかもしれないなー。
そんなことを考えさせてくれる一日でありました。
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