送辞
3月は卒業のシーズンですね。
ルカは高校2年なので、まだ卒業には関係ないわ、と思っていたのですが、そんなルカに在校生代表の送辞を読むという大役が回ってきました。
私はとっても喜んだのですが、ルカはやりたくなかったようで「なんで、勝手に俺に決めるんだ〜」と怒りモードでした。
まあ、なんで?というと、ちょうど送辞の担当の先生がルカと関わりのある先生で、今年は厳粛な雰囲気の卒業式にしたいという学校の意向にそって、厳粛な雰囲気にあうルカを選んだということでしょうか??
先生には「声の大きさ、普段の態度等々を考えると君がぴったりだ!」とお褒めの言葉をいただいたのにもかかわらず、ルカは「そうかー、俺の声が大きいのが悪かったんだ。やっぱりお母さんの言うとおりだよ。声が大きいっていつも俺に注意してるもんね。言うことを聞いて声を小さくしておけばよかったなー」と言うのです。
いや、それは時と場合によることで、みんなの前で話すときは、ルカの良く通る声はとっても重宝すると思うんですけど・・・。
そんな私の気持ちとは裏腹に「よし、もう大きな声を出さないようにする」と宣言したのでありました。
まさか、小さい声でぼそぼそ送辞を読むんじゃないでしょうね?と一抹の不安を感じました。
小さいときから、ルカ自身が納得してないことを無理にやらせて失敗したことは数え切れません。
例えば、外出。出かけたくないのに無理に連れて行って、大騒ぎされて後悔したり・・・そうそう、夏休みのラジオ体操をしたくないというのに、無理に連れて行ったら、奇声をあげるわ、走り回るわで、ヒンシュクをかったこともありました。
その度に、ルカが納得できないままに何かをやらせるのはやめよう、と肝に銘じる私でした。
でも・・・これはどうだろう?
ルカももう高校生。やりたくなくても、やらなければならないことがあることを、そろそろわかってもらってもいいかも知れない。
ルカも、自分以外に代わりがいないことを悟ったのか、いやいやでもやらなければいけないことは、わかっているようでした。
卒業式の1週間前から、式の準備は始まっていたらしいのですが「卒業式のことは聞かないで」とルカが言うので、私は様子を聞きたくても聞けない状態でした。
でも、前日はとうとう私もガマンできなくて「練習どうだった?」と聞くと、「実は・・・ちょっと小さい声でぼそぼそ読んでたら、先生が途中で真面目に読んでないことに気づいたみたいでさ。怒られたよ」とルカ。
あー、やっぱり。
「ルカ、これはあなただけの問題じゃないのよ。卒業していく先輩達がそんな送辞を聞いてどう思うかな?」と私が言うと「わかってるよ。怒られてからは真面目にやってる!!」と言うことでした。
卒業式当日、在校生の保護者も参加していいということだったので、お友達と一緒に私も卒業式に参加しました。
厳粛な卒業式にしたい、という意向は見事に反映され、式は粛々と進んで、ルカの送辞の番になりました。私が思っていた以上にはっきりした口調で送辞を読みあげるルカ。うん! 上出来。
欲を言えば、いやいややっていることをわかっている私には、やはり感情がこもってないように聞こえてしまいました・・・。まあ、仕方ないか。
高等養護の卒業式、私は初めて参加したのですが、すばらしかったです。
「古き良き時代の卒業式を見せてもらったわね」と、帰り道、友達と話しました。
答辞を読んだのは、ルカと同じ中学出身の女子生徒でした。
彼女は中学の途中から、個別級に移ってきた生徒でした。答辞のすばらしさと、彼女のいろいろあったであろうこれまでの道のりを考えると、聞いていて胸が熱くなりました。
みんな、社会人になってもがんばれよーとエールを送りたい気持ちです。
卒業式を終えて帰宅したルカは、緊張から解放されて、晴れ晴れとして表情でした。
「いい卒業式だったね。お母さん、もう泣きそうだったよ」と私が言うと
「えっ、お母さん泣かなかったの? 俺は最後の3年が退場の時泣いちゃったよー」とルカ。
そうなんだ。なんだか、ほっとした私でありました。
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