・近況報告179

ケンカ

高校生になってから友達づきあいをするようになったルカ。友達同士、どんな話をしているんだろ?と以前から、不思議に思っていました。
例えば、実習が終わった後とか「友達も疲れたって言ってた?」と私が聞いても「さあ〜、友達同士でそんな話はしないなー」とルカは言うのです。
ルカの場合、結局友達といっても、ギャグをとばし合ったり、せいぜいTVゲームの話をしたり、それ以上深い話っていのうは成立しないのかな?等と思う私でありました。

先週の金曜日、ルカは予定よりやや遅い時間に学校から帰宅しました。「おそかったね〜」というとルカは元気のない様子。そしてそういう時はいつものように「実は・・・」と長いお話が始まります。
ここからは、そのルカの話です。少々話が入り組んでいるので、説明が難しいのですが。

今、ルカが親しくしているのは、一郎君と二郎君です。一郎君とは一年からの友達で、二郎君とは2年になってから一郎君を通じてお友達になりました。私からみると、一郎君は多分自閉症の仲間ではありません。でも、二郎君は少し自閉症の仲間かなーと思わせるところがあります。
ルカとこの友達は、以前から三郎君という同学年の子をうっとうしく思ってました。三郎君はとってもわかりやすい自閉症のお友達です。
三郎君も友達と仲良くしたいと思っているらしいのですが、関わり方がわからなくて、つい、人に急に抱きついてきたり、たたいてきたりするとのこと。特に、ルカに近寄ってくることが多いらしく、ルカはそれがとってもイヤなので、三郎君より強くたたき返したりして、追い払ってしまうそうです。以前から、そのことで、「やり過ぎだよ〜」と先生から指導されてました。
ルカは大抵、先生から注意されたことは反省するタイプなのですが、このことに関しては、「三郎君から手を出してくるんだ〜。無視しようと思っても我慢できない!」と納得できなかったのでありました。
友達のみんなも三郎君の方が悪いと言っていると、ルカは自分の行動を正当化していたのでありました。

ところが、金曜日、また三郎君からちょっかいをだしてくるので、追い払っているところに二郎君が遭遇。
いつもはルカの味方のはずの二郎君なのに「ルカやめろよ」と三郎君の味方をするような発言をし、しかも、その後担任の先生にそのことをチクった(告げ口をした)のこと。
友達をチクるのは、許せない! ということで、帰り道、ルカと一郎君、二郎君は口論になってしまった。ルカと一郎君の主張は、「三郎君が最初に手をだすのが悪いんだ! それなのにルカが悪いみたいにチクるのは許せない」
一方、二郎君の主張は「俺は別に三郎君の味方をしているわけではないが、先生から教えるように言われているから・・・」とのこと。
話は平行線になりルカと一郎君は「もうおまえとは絶交だ」と絶縁宣言。しかし、仲間はずれにされた二郎君は「なんでだよ〜」と、泣きながらルカに鞄をぶん投げた! ルカも頭にきてその鞄をけっ飛ばし、そして別れた・・・

こんな内容です。 なんだか、真剣に聞かなければいけない話なのに、ルカがケンカするんだーと私は妙な新鮮味を覚えたのでした。
「ルカ、それでどうするの。絶交するんだ」というと
「それがさー、なんか後味悪いんだよなー。二郎君がチクりさえしなけば、ずっと友達でいられるのに・・・って、一郎君とも話したんだ。でも、俺たちは仲間なんだよ。仲間なのに先生にチクるなんて許せない。きっと俺は月曜日先生に呼び出しされて怒られるんだし。」とルカ。
「後味悪いのは当たり前だよね〜。二郎君は別に間違ったことしてないものね。まあ、せいぜい、悩むことだわね〜」と、今回は私も珍しく?ルカを突き放した格好になりました。

悩めるルカはせっかくの土・日の休みも元気がないまま過ごしたのでした。

そして月曜日、帰宅後のルカ。なんか元気を取り戻した様子です。
「どう? 先生に呼び出しされた?」と聞くと、 「うん、呼び出されたんだけどね。二郎君は別にチクるつもりじゃなかったんだって。先生も今回は三郎君のことはおいといて、とにかく3人仲良くした方がいいってさ。 あーよかった。」
帰りは3人仲良く帰ったということで、一件落着なのでありました。

ルカは友達に対して、どんな感情を抱いているんだろ?と、不思議に思っていた私ですが、今回ルカの口から「仲間なのに」という発言があったのがとても意外だったし、うれしい出来事でした。
普段は、馬鹿ばっかり話している友達同士、いざとなるとその結束は固いものなんですね。そして、そういう人間同士のつきあいをルカが学んでいけていることは、とても貴重な経験だと思いました。

が、しかし、仲間同士、告げ口は御法度とということで、いろんな問題で先生たちも頭を抱えていることも事実。
ルカも三郎君とのつきあい方を考えなくてはいけないなー。

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