・近況報告169

デビュー

あれはルカが小学校3年の頃だったでしょうか?
幸運にも私は、成人のアスペご本人のお話を聞く機会がありました。
あの頃の私は、ルカが成人になった姿など想像しようもなくて、自分が障害があると知った上で、これまでのことを語ってくれたその方の話を聞きながら、なんてしっかりしているんだろうと驚いたものでした。
その頃のルカの診断名は「非定型自閉症」だったかな? 学校の成績もよかったと思われるその方とルカとの接点を見いだすことができなくて、なんだか別世界の話を聞いているようでした。

それが数年たって、こんな日が来ようとは・・・。
先日、ルカと私は現在お子さんが通園に通われている親御さんの前で、自分の体験談をお話する機会に恵まれました。
今年の夏主治医からルカに「5分でいいから話して見ない?」と言われ、「5分」という短さに安堵したのか「5分だけなら・・・」と承諾しました。
彼の場合、そこまで約束を取り付ければ、大丈夫。行くと約束したものは守ります。
先日の学校の文化祭でもそうですが、皆の前で話すことは彼は苦手意識はあるものの、いざ本番になるとほどよい緊張感の中、実力以上の成果を出してくれるのが常です。
前日に(あまり前から言うとそれからずーっと緊張しなくてはいけないので・・・)「明日だよ」というと「えー、そうだった〜?」と少しあわてたものの、行く気持ちに変わりはない様子で、私も安堵しました。

当日は、始まる前に知らないスタッフの人に囲まれ緊張気味(小さい頃お世話になった先生もいたのにルカは見事に忘れておりました!)
主治医の先生が顔を見せると安堵の表情がみてとれました。やっぱり主治医を頼りにしているのね〜などと、改めて思う私なのでありました。
そしていざ会場へ。
たくさんの人にちょっとびびったルカでしたが、まず自分の名前や学校名などを自己紹介し、それから司会者である主治医の先生からいくつか質問していただき、結構順調に答えられたので、会場の方からも質問をしてもらって、そして、無事退場していきました。
現在通っている高等養護の様子など、とてもしっかり説明できており「やっぱりこの子、ほどよい緊張感があった方がいい状態をみせることができるんだなー」と再認識した私でした。

ルカが退場した後は、引き続き私の子育て体験記のお話だったのですが・・・。
なんだかルカのことで頭がいっぱいだったせいで(単なる言い訳?)、まとまりのない話をしてしまいました。
その日は休日だったのでお父様がたくさんきていたので、子育てのノウハウよりも、母親の心情みたいなものを話したいなとは思っていたものの、あとであらかじめ話す内容を書いたメモを見て、話す予定の半分も話してないことに気づき、青ざめるルカママでありました。辛抱強く聞いた下さった皆様に感謝です。

自宅に戻り「どうだった?」とルカに感想を聞くと、やはり「緊張した〜」でした。でも、みんなから「よくできたよ、すごいね〜」と言われたことがうれしかったらしく「俺ってすごいのかなー」とまんざらでもない様子。
一カ所笑いが起こった部分では「ああいう笑いは、まあいいよね」と分析してみせる余裕?も見られました。

きっと会場にいた人の思いは、私がかつて成人の方のお話を聞いたときと同様、自分の子供との接点を見つけることは難しかったと思います。まだ就学前のお子さんということだし。
実際、その成人の方とルカとは、全然タイプも違うし、全然別の道を歩いています。障害のタイプや親御さんの考え方によって、子供の将来像というのはそれぞれ違って当然です。でも、かつて私がそう感じたように、大きくなっても、いろいろあったけどこうやって無事に過ごせてるよーということを感じてもらえればいいかなあと思っています。
そして、今回の経験でルカ自身も、自分の存在が周りの人の役にたっているという喜びを、今すぐは無理でも、後々感じてくれたらなーと思っています。

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