声
ルカの声は大きくてよく通る声です。遠くで話していても、大勢の中で話していても目立つ声なので、私はすぐルカの声を聞き分けることができます。
大勢の前での発表などは、この声がとても役にたち、上手に発表できるのですが、日常生活では「もっと小さな声で」と言われることが多いのです。
けれども、彼にはなかなかこれが難しいようです。
先日、近くで橋の開通式がありました。
中学のミミはブラスバンド部ですが、この開通式典で発表することになっていたので、みんなで聞きに行きました。
単独行動派のルカは、私とルカパパと家を同時刻には出たものの、後は一人で行動ということになりました。
橋に行くと、模擬店も出て大勢の人が集まっていました。ミミの発表の一つ前、幼稚園の鼓笛隊の発表が行われていました。
ルカはどこかなー、と探していると、いたいた・・・ルカも私たちを見つけた様子です。
「あっお母さん」と話しかけてきました。
とっても大きな声で・・・。
「幼稚園のくせに、俺が思っていたより随分うまいよねー、予想がはずれちゃったよ」と幼稚園児の演奏にムキになるルカ。
あんまりよそ様には聞かせたくない話の内容なのに、ルカの声に周りの人がちらちらとこちらを見ているような気が・・・。
「ルカ、声が大きいよ」と思わず言うと、「えっ? 全然大きくないよ。こんなに人がいるんだよ。聞こえないでしょ」とルカ。
これ以上話してもムダなことを感じた私は「好きなところに行っていいよ。」といってその場を切り上げました。
彼は一人で歩いている分には、障害者とは見えないようで、おとなしそうな中学生?に見えてるのでは、と推測されます。
というのは、一人でいるとよく道を聞かれるらしいのです。
先日などは、学校の帰り、某駅のホームで外人に英語で声をかけられたそうです。
雰囲気で「○○に行くのはこの電車でいいのか」と聞いているらしい事がわかったので
「YES」と答えたら、外人さんはとてもうれしそうだったとの事でした!
そんなルカも、私や友達と会うと急にハイになって、大声で少々不適切なことを話したりするので、周囲に注目されることもしばしばです。
さて、ミミの演奏も無事に終わり、私たちは家に戻りました。
「ねえ、今日俺のこと、声が大きいって言ったでしょ?」とルカ。
「俺はよく声が大きいって言われるけど、当然だよ。あんなワイワイ、ガヤガヤのところで話すときは、自分の話している声が聞こえなくなるんだよ。だから、大きな声で話さないとだめなんだよ」
そうなのか。元々の声が大きいのに加えて、彼は聞こえ方もちょっと私たちと違うかもしれない。
例えば、ヘッドホーンをして大きな音を聞きながら、人と話をすると、自分が思っているより大きな声が出ていて、恥ずかしい経験をしたことはないでしょうか?
ルカの雑音の聞こえ方って、もしかしてこれに似ているのかしら?
橋の開通式典の時は、私たちにとっては普通に話しても聞こえる範囲の騒がしさだった思うのですが、ルカにはそうは聞こえてなかったということです。
自分で自分の声が大きく感じてない限り、周りから注意されてもルカには納得しがたいことなようです。
うーむ。ただ単にハイになると声が大きくなると感じていた私。勉強になりました!
前に戻る