・近況報告161

態度

「人として一番大切なものは何だと思う?」学校の友達の話をしている時、ルカはこう私に質問しました。
「うーん、わかんない」
と言うと、「えっ? 俺がいつも言っているでしょ。それは能力じゃないんだよ。態度だよ。授業や作業の時は人の話をまじめに聞く。ふざけないことが大切なんだよ」

なぜこんな話になったかというと、先日部活の時に友達二人が喧嘩になったとのこと。
原因は一人の子が・・・その子はチームで一番バレーのうまい子なのですが、よく「ボールを怖がって逃げてる」とか、他の子を馬鹿にする発言をしたり、その他にも友達によくちょっかいを出す子らしいのです。
ルカもこのちょっかいを出されるのがとても嫌いなタイプですが、やはりその喧嘩になった友達もイヤだったらしく「やめろ」「いや、やめない」みたいなことで部活中に派手に言い争いになったとのことでした。
結局当然のことながら、ちょっかいを出した方がこれまた派手に怒られて「あの子、バレー部やめるんじゃないのかな?」とルカが言いました。
それで私はつい「えーっ、あの子がやめたらバレー部は困るんじゃないの? ほとんどあの子が点数とってるようなもんだし」と言ってしまったのです。
それで、ルカの上記の言葉となったわけです。
彼にとっての人を評価する基準は、勉強ができるとか運動ができるとか、そんな能力的なことではなくて、いかにまじめに取り組むかということにあるようです。

このルカの考え方は、ルカのこれまで歩いて来た道のりをよく物語っているなーと思いました。
彼はいわゆる小さい頃から、障害児教育畑を歩いてきた子です。
そこでは、いろんな能力に限界があったりする子がいるわけで(もちろん、一方で秀でた能力を持ち合わせている子もいますが)、その中で能力主義を語ることはいわば御法度です。
でも、例えばテストで満点とるとか、100メートルを○秒で走るとか、能力は具体化しやすく自閉症の子供にとっもわかりやすいものです。
その中で、時として評価の基準に矛盾を感じて、混乱を起こす自閉症の子もいます。
特に、高等養護に入ってからは、仕事に就くためには何が必要か?という話題が多く、その中で能力ということは語られません。真面目に取り組む姿勢を第1としています。
でも、今の高等養護のなかでも「態度」が悪くても、作業が早くできればいいじゃないか、と思っている子が少なからずいるはずです。
でも、今のルカは「態度」が大切と言うことができる。育った環境というものも、人の価値観に大きくかかわるものなんですね。

うーむ。現実の世界ではどうだろうか? ふざけていても要領よく立ち回れる人の方が評価が高かったりしますよね〜(笑)
ルカの場合、作業能力が決して高くはないので、それを「態度」でカバーしようと無意識に思っているのかもしれません。
態度さえよければ、結果はどうでもいいという、いいわけに使って欲しくもない気が・・・。
「真面目にやって、その結果、能力もUPすることが理想なんじゃないのかな?」と、ルカには言ってみましたが、ルカはそれには納得してなかったなー。

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