仮入部
先週ルカは、バレー部に仮入部しました。
部活はやらないとかたくなに言っていたルカも、1年という時の流れを経て、気持ちの変化があったようです。
そもそも部活をやらなかった理由は、
・入りたいと思う部がない。(彼の好きな野球部、鉄道愛好クラブは高等養護にはありません。陸上は練習厳し過ぎだし)
・放課後、及び休日は学校に拘束されない時間であるので、自分の好きなことをしたい。(小学校の時から、帰宅時間が決まっていて、時間に対するこだわりがありました。)
・余暇が比較的充実しているので、余暇活動の一環としての部活、という必要性がない。
まあ、こんなところです。
そして、隠された理由。実はここが一番ルカが改善していかなければいけないところかもしれませんが、
未知の世界に対する不安、といったものが彼の心の中を大きく占めていたのでは?と推測されます。
では、何故気が変わったのかというと。
・先生や母が部活をすすめる・・・部活は強制ではないが、入ることはいいことなのだろうか?と心が揺れる。
・「将来仕事に就くと、不規則な就業時間になる可能性が大きい(残業とか)。学校にいるときから、そういう不規則な生活にも慣れた方がいい」と、進路の先生がみんなの前で言った。(この話はルカにとってかなり衝撃的だったようで、決まった時間に帰り、休日は学校に関係のない生活をすることが日課になっていたルカも、今までの生活を見直した方がいいかな?と考えるきっかけになりました)
・この頃結構暇になった(むしろやることは増えていると思うのですが、余裕ができてきたということかな?)
・部活は厳しいイメージがあるけど、友達のH君はバレー部に入っていて、結構楽しそう。
というような具合です。
1年の後半あたりから「部活もいいかな」と言い始めていて、2年になったら考えてみると言うことでした。
2年になってもルカから部活の話は出ないし、こちらからあんまり言うと逆にイヤになるのでは?と思いつつ、ある日
「そういえば、部活どうした?」と聞いてみました。
すると
「あっそうそう、入ることにした。」ときっぱり。
「へーっ、決心ついたんだー」と私が言うと
「だってね。この間クラスで自己紹介したんだけど、その時オレが"部活はやってません"って言ったら、みんなコケちゃってさ・・・。やっぱり部活やってないのって珍しいのかと思ってさ」とのこと。
ほーっ、部活をやることを決心する決定打がこんな理由とは。アスペのルカがみんなの反応を気にするのか・・・と私はとても意外に思いました。
「それで、手続きってどうすればいいのかなーと思って」とルカ。
とりあえず、連絡帳で担任の先生に私から報告し、後はルカが直接部活の先生に申し込むという形になりました。
でも・・・ここでふと疑問。
あの時、私が「部活は?」と聞かなかったら、彼はどうしていたんだろ?
心の中で思ってはいても、誰にどう言えばいいかがわからず、ずーっとそのままになっていたような気もします。
なかなか周りからのアプローチなしで動くというのは、むずかしそうです。
なにはともあれ、無事に仮入部届けを出し、まだ1日だけですが、部活体験をしました。
思ったより楽しかった!と元気に帰ってきたので、多分そのまま入部ということになると思うのですが・・・。
今回の部活のことを通して、私は「待ちの子育て」ということをふと思いました。
子供はいつかは成長するものだから、お母さん焦らないで待ってあげてね・・・みたいな趣旨の言葉だと思うのですが、
ルカが小さい頃、私はこんな言葉は嫌いでした。
この子は障害があるんだ。普通の子とは違う。待っていて何もしないで育つワケはない・・・そんなことを思っていました。
それは、ある意味妥当な考えだとは思います。
特に、障害のことを話しても周囲から「大きくなるにつれて自然とよくなるから」なんてことを言われたことが、私をそんな気持ちにさせたのだと思います。
そして、私はルカが小さい頃は「待ちの子育て」というよりは先手先手に対処してきました。
いつも主導権は私です。
まだまだいろんなことを選択する能力のないお子様の段階では、それはそれでよかったと私は思っています。(やりすぎだったと反省する点も多々ありますが)
ただ、子供が大きくなって思春期あたりになった時、子供との関わり方を見直さなければならないと思います。
ほんとはこうした方がいいのになーと思うことでも、ルカ自身の気持ちがそうなるまで、待たなければならないこともあります。
部活ということに限らず、ルカは新しいことで、参加自由なものはたいてい断ります。
「始めから決めつけないでやってみればいいのに」という私の言葉に、「強制でないものはオレの好きにしていいんだよね」とルカはいつも言います。
その言葉に私は内心いらいらしながらも、ルカの理屈はもっともだと考え、それ以上本人には言いません。
でも、いつか変わってくれればいいなーと思っています。
アスペという障害を考えると、待っていてもそうなってくれないこともあります。
でも、今回は、私に待った甲斐があったなーっと思わせてくれる出来事でした。
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