・近況報告 その99


労働週間

ルカの学校は今週1週間労働週間ということで、授業は朝から晩まで作業1色となります。
1年生は各学期ごと1回ずつ労働週間が設定されています。
将来働く人になるための準備としていろいろなカリキュラムが設定されているのです。
事前学習として配布されたプリントの一部を紹介します。

労働週間事前学習
●さあ、目指そう社会に出るための基礎的な力
@コミュニケーション・・・やる気があらわれます。声の大きさと言葉遣いにも注意しましょう。
挨拶・・・自分から進んで声を出しましょう。
返事・・・空返事(わかってないのについ「はい」と返事してしまうこと)は絶対にいけません。
質問・・・正確に作業を進めてください。
報告・・・責任を果たし、次の指示を進んで求めましょう。
A体力・・・長時間の作業に慣れましょう。
B気力・・・集中して最後まで作業しましょう。
C欠席・遅刻・・・健康管理を万全にしましょう。
D時間厳守・・・1分前行動をしましょう。
●終わったら、3つの発見、自分の実力と課題を知る。
@得意なこと
A苦手なこと
Bできないこと

ルカは週の前半はコンクリート作業、後半は窯業をやりました。
水曜日、前半のコンクリート作業を参観してきました。
作業服に長靴姿、みんな見かけだけは立派な大人のようです。
作業の内容は、コンクリートの平板作りということで、水と砂利をミキサーに入れて混ぜ、型枠に流し込み固めるという一連の作業を一日でやります。
現場は緊張感でいっぱいです。
ルカは参観の時は、周りが気になって集中できないと、前から言っていましたが、この日もやはり参観に来た人が気になってしまったのか、「どこ見てる!」と一発怒鳴られておりました。
そう・・・コンクリート作業は作業学習の中でも一番厳しいと言われている作業なのです。
学校側としては、できるだけ実際の職場を想定し、意図的に厳しい注意もするとのことで、ルカは4月当初は「もうもたない」と悲鳴を上げていました。
もともと大きな声で怒鳴られることが苦手なルカ。やはりストレスはたまります。でも、私が思っている以上に慣れるのが早いようで、なんとかやっていけそうだなあ〜と、ひとまずは安心しました。
障害のある子供たちの学校なのだからそういう配慮はしてくれないのか?と親として言いたくなりますが、作業学習を通して、子供の限界を知るということも学校側のねらいのようです。
だから、できないことを無理矢理厳しく指導して、できるようになろう・・・なんてことではないのです。
つまり、この子はどこまで耐えうるか、そういう見極めをしておいて、実際に職場についてからできるだけスムーズにやっていけるように学校にいるうちにいろいろな経験をさせようということのようです。
いろいろな経験の中で、自分の得意なこと、苦手なこと、できないことを見つけていこうというわけです。
苦手なことは努力して克服ということもありますが、できないことは障害に関わることでもあり、本人の努力ではどうしようもないことがあります。職業選択する場合、本人が自分をよく知って妥当な職業選択をして欲しいということから作業を通して「自分の課題と実力を知る」ということが重要になります。
3年生になるまでに、一般就労にいけるのか、それともひとまず授産施設等に行った方がいいのか、作業学習はそういう見極め材料にもなるようです。
「学校では、どんどん失敗をさせて下さい。学校だったら何度でもやり直しできます。社会に出る前にできるだけ多くの課題をみつけましょう」と、進路指導の先生がおっしゃっていました。

参観を終えて帰りの電車の中で・・
どこかの高校生の集団が乗ってきました。
ケイタイ電話を片手に荷物をどさりと下に置き、自分たちも床に座り込み、大声でくだらないおしゃべりが始まります。周りの乗客の迷惑など一切関知してない様子。
高等養護に通っている子供たちは、将来何らかの行政の援助をしてもらう立場になります。
しかし・・この高校生たちとルカ達と、一体どちらが社会に貢献できる大人になるだろうか??
一生懸命作業学習をやっていたルカたちを思い浮かべながら、そんなことを思いました。

あっ、それから・・・
作業学習でコンクリートや窯業をやっているからといって、実際にその職業に就くということではありません。
それらの作業をとおして労働の厳しさ、喜びを知るということですので、実際の就職先は多種多様です。念のため・・・。

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