・近況報告 その91


災難は忘れた頃にやってくる

今週に入り高等養護学校もぼちぼち通常の授業に入りつつあります。
授業の中身としては、教科の授業は数学と理科の合体で「数理」、国語と社会の合体で「国社」、それから美術・音楽・家庭の3教科がローテーションで組まれます。
数理と国社は、はじめに実力テストを行い、能力別に1クラス12人で4クラスに分かれて行います。養護といえども、あらかじめ同じような子供たちを集めてるので、個別の授業というのはありません。
そして養護学校ならではの、「作業」と「体力つくり」というのがあります。
作業は、はじめに希望を出して、2種類選ぶことができます。ルカは第1希望はコンクリート。なんで一番厳しそうなものを・・・と思ったのですが、見学したときコンクリートが固まって行くのがおもしろかったのだそうです。
結局、希望が通って、コンクリートと窯業をやることとなりました。
朝の早いのにも慣れつつあり、やれやれ・・・といったところです。
が・・・

学校から帰ってくると、ルカがやけに元気がありません。
「お母さん、言いたいことがある」と言ってルカは話し出しました。
朝の電車通学でのこと、途中の乗り換えのところで同じ高等養護1年の子に声をかけられた。その名はなんと昨年作業実習で一緒だったA君。
このコーナーでもお話したことがあるかと思いますが、ルカは昨年、養護総合教育センターで市内の同級生6人くらいで作業実習なるものを受けたのです。そこにA君がいて作業初日にプロレスごっこだと称して、ルカに暴力まがいのことをした子でした。 作業の遅いルカは実習の間、その子に「まだかよ〜」と嫌みをいわれ続けたというイヤな思い出あるのです。
あの子も高等養護受けるのかなあ〜とその当時は心配してましたが、合格したうれしさでその子のことは親子共々忘れていたのです。
入学名簿をみても思いださなかったわけですが、ホームで声をかけられその子の顔を見て、記憶がよみがえったというわけです。
A君は、「ようルカ君」とルカの背中をぽんとたたき、「逮捕する」などと過激なことを言って、ルカにぴったりついてくるとのこと。
電車に乗って違う車両にうつっても、しつこく追いかけてくるということです。
しかし、学校が近くなると離れて行くとのこと・・・・。
コミュニケーションの苦手な子供たちなので、仲良くしたいのになかなかうまくつきあえないのでは?と、善意に解釈したいところですが、どうもそうではないらしい。
ルカはどうやら先週からつきまとわれたらしいのですが、はじめはこれくらいはがまんできると思って、私にも言わなかったそうです。
でも、だんだんエスカレートしてきて、もう限界だと思って私に言うことにしたそうです。
人の顔を認識するのが苦手なルカは、同じ制服をきていることもあって、はじめはA君と同一人物であるのかどうか、迷った様子。
でも、毎朝顔を合わしているいるうちに確信が持てたようです。
「変わった髪型してるから・・・」とルカ。どうやらムースで髪を固めて立てている子のようです。

次の日早速連絡帳で担任に報告しました。A君の担任から注意してもらえることになりました。
ルカはただでさえ朝が早いのに、もう1本早い電車で行くことにしました。
幸い教科でも作業でも同じクラスになることはないようなので、電車でさえ一緒にならなければなんとかさけられそうです。
養護の先生もそういうトラブルには慣れているようなので、大丈夫かとは思いますが・・・・

とりあえず解決してほっとしたルカですが、私にポツリとこんなことを言いました。
「いろいろあって誰かに相談するでしょ。だんだん自分の言っていることがホントかどうかわからなくなるんだよね。もしかして俺の勘違いなのかなあって」と。
そう、作業実習のときもA君はとても自己主張の上手な子だったらしく、俺じゃないと言い張り、ルカがしどろもどろになって、担当の先生には、「実際に見てないのでわかりません。」と冷たいお返事をいただいたのでした。

それにしても、ルカは自分から積極的に同級生に声をかけるタイプではないのでよくわからないのですが、その子はどういうつもりなんでしょうか?
ある意味うらやましい気もします。高等養護の子は軽度の子供たちということもあって、友達づきあいも活発な様子です。
友達とどこかで待ち合わせてボーリングにいったりカラオケにいったり・・・なかには授業をサボってデートしちゃったカップルもいるようで、普通の高校とあまり変わらない人間模様があるようです。
ルカにとってはとても難しいことです。
来週、家庭訪問があるのですが、その事前調査書に私はこう書きました。
「1人でいることが多いかもしれませんが、それは彼の個性だととらえています。友達と一緒に遊ぶことを強要しないで下さい」
変わった母親かなあ〜 私・・・


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