・近況報告 その9


作業能力検査

私たちの住んでいる市では、養護教育総合センターというものがあり、障害児に関わる教育をしている小・中学校の先生にアドバイスを行ったりしているようです。
この間、特殊学級に通っている中学2年生を対象に、作業能力検査なるものを行っているというので、受けに行ってきました。
なんで、中学2年生で行うかというと、多分、先生方の進路指導の参考にするためと思われます。
別に、中学を終えてすぐ就職するわけでもないのですが、職業訓練的な学校を希望している子供を対象に、一応どのくらいの作業能力があるのか検査して、これからの指導の参考にしましょうと言うことなのでしょう。
だったら、担任と生徒で行けばいいものを、保護者も必ず出席して下さいと言うことで、私も行って来ました。

なんとなーく、冷たい書き方をしてしまうのは、なぜか・・・・・
小学校入学以来、何度かこのセンターに足を運ばせていただきましたが、あまりいい思い出がないのです。
納得のいく評価・アドバイスをもらったことが、ないのです。
もちろん、いい先生もたくさんいるはずです。
多分、私がひねくれているのでしょう。

さて、検査の内容は・・・・・
簡単なお金の計算や、時計の見方、ベルトコンベアーを使ったポールペンの組立作業・ボルトやナットの種類分け・色鉛筆を見本と同じように箱に詰める作業とか・・・・・いかに、時間内に早くきれいに出来るかを問われるものが多かったです。
ルカは、一生懸命やったのですが、お金の計算・時計の見方はできるものの、そのほかの、作業能力はあまり・・・・・
アスペルガーの子は、手先が不器用で、運動能力にも難のある子が、たくさんいると思うのですが、ルカも例外ではなく、小さい頃から手先が不器用でした。
時間内に急いでやるようなことも苦手です。
だから、作業能力は平均以下なのです。
作業の速さだけでなく、ルカはどういうわけか、アスペルガーの割には、「まあいいか!」と言うところがあって、それが作業能力にもあらわれ、正確さも欠けてしまったようです。
私も、担任もルカの苦手なところがわかっているので、最後に感想を尋ねられたとき、
本人も目の前にいたので、
「よく、やったと思う。」
と答えたのですが、これが仇になったのか、
検査をした担当の先生は、
「ちょっと、訓練不足ですねえ。握力は普通にあるし、やればできるんだと思うんですよ。家のお手伝いなど、もっともっとやらせて下さい。」
それを、聞いていた、年増の指導主事の先生が、
「ルカくん。お手伝いやってますか?なんでもお母さんにやってもらっちゃだめよ」
と、いかにもわかったようにおっしゃっていました。
それを聞いて、反論があるなら私も言えばいいところですが、私は「こいつ、やなやつ・・・・」と思うと、黙ってしまう癖があり、そのままはいはい聞いて、帰ってきました。

しかし・・・・やはり私は言いたい!!
家の手伝いは、小さい頃から言われていることなので、(まるで障害を持った子供の宿命のように)、私なりにやらせてきたつもりです。
彼は、他の中学2年の男の子に比べれば、家のこともよくやってくれています。
やればできるという、まことに希望のもてる評価をいただいて、担任の先生は喜んでいたようですが、私としては、彼の本当の意味での不器用さが、あの人にわかっているのだろうかと、疑問に思いました。

アスペルガーの子は、流れ作業のような時間に追われる仕事は、向いてないように思います。
しかし、いわゆる知的障害の人が、一般就労できるとしたら、やはり作業的な職種に就くのが、一般的なのでしょう。
ルカは、特殊級にいるのだし、高校も知的障害児向けの高校を希望しているのだから、センターの方の言うとおり、手先が起用になるように、訓練した方がいいのでしょう。

でもさー、なんで障害を持っているからって、訓練・訓練って言われなければならないの?
他の中学生が、友達と楽しそうに遊んでいるのに、なんでうちの子だけ、ボールペンの組立てしなきゃいけないのよー
と、私には珍しく、ルカが不憫に思えてしまったのす。

早期療育を受けている頃から、「こんなに小さいのに、つらいことはさせたくない・・・」そう、言って、療育を拒否する親御さんを何人もみてきました。
私はといえば、子供の将来のためにはつらいこともやるべきだと、どちらかと言うと、訓練をやらせたい親だったと思います。
それなのに、ここへきて、なんだか初めて、そんな親御さんの気持ちがわかったような気がしました。

それと同時に、今までルカに対しての漠とした不安が、いよいよはっきりしてきた気がしました。

ちょっと話が飛びますが、6月にNHK教育の「きょうの健康」という番組で、アスペルガー症候群が取り上げられたのですが、ご覧になりましたでしょうか?
解説なさっていたH先生は、実はルカが小さいとき、ちょっとだけみてもらったことがある先生です。
一般の人がみる番組とあって、アスペルガーのことを実にわかりやすく解説しておられて、これなら学校の先生にもわかるかなあなどと思いながらみていました。
 その中で、アスペルガーの人たちの職業について、お話ししておられたのですが、正確には覚えてはいませんが、要するにアスペルガーの人たちは、自分の得意分野で才能を発揮する人が多く、芸術面やコンピューターの分野などで、活躍する人もいるというような、実に明るい未来が待っているようなお話でした。

アスペルガーに限らず、自閉症の人たち全般に、秀でた才能を発揮して、成功を収めていることは、私も知っています。
しかし、その反面、コミュニケーション能力に欠け、せっかくの才能を生かせないで、終わってしまう人もいるようです。
私は、秀でた能力を開発することより、むしろコミュニケーション能力を高めるような育て方をしてきたつもりです。
ルカは、別のところでも書きましたが、何かに夢中になっても飽きっぽく、学業成績も芳しくないものですから、それは妥当な育て方だったと自分では思います。
しかし、ここにきて、ルカの将来を考えるとき、ルカは、アスベルガーの負の部分は持ち合わせていても、正の部分は何も持ち合わせてないような気がしてしまいます。

所詮ルカは成り上がりもので、エリートのアスペルガーではないのです。

こんなルカは、将来どんな職業を選べばよいのでしょうか?

教えて下さい。H先生!!


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