卒業A
今日は卒業式でした。3年間ってほんとに短いですね。
このところルカは連日の卒業式の練習で、精神的にかなり負担が大きかったようです。
漠然とした不安もあったのでしょう。食欲がない、食べ物を飲みこむと胸が痛い、などと訴えておりました。
式の練習は、全員がそろわないと何回もやり直しです。ルカ自身は一生懸命やっていても、一部の子たちがそろわないと「もう一度」ということになります。「みんなまじめにやれば一回で終わることなのに、ばかだよね」とルカ。
それと、先生達も有終の美を飾らせたいあまり、つい厳しくなって、ちょっとしたことで、怒鳴られてしまったそうで、それもルカには耐え難いことでした。「ほんの少し立つのがおくれただけなのに、あんなに怒鳴らなくても・・」とルカ。
そして「俺もこのごろ変だなあ、前は先生に対して、逆らうようなこと思わなかったのに、どうしちゃったんだろう」とまた不安になります。
きっと、今までは先生の言うことにも矛盾があることに気づかないで、素直に聞けたのに、いろんな矛盾に気づき始めたが故の悩みかもしれません。反抗期?
それでもルカは、そんな気持ちを担任に知られたくないと言い「連絡帳には書かないで」と、釘をさされていたので、担任にも知らせることができず、ちょっと心配な数日間でした。担任は担任で、交流級にいるときの表情が硬い、と心配されておりました。
ストレス解消だあ〜と言って、TVゲームをやり始めるルカ。ゲームをやっているといろんなことを考えなくてすむから・・・と言ってました。う〜〜ん、君も15歳の悩める少年なんだねー。
いろんな思いがあって、とうとう本番。
3年生入場から式は始まりました。1組、2組、3組、4組。そして5組。「えっ、5組?」とお母さん達のささやきが聞こえる中、担任の先生、ルカ、そしてもう一人のクラスメートが入場してきました。
例年なら、特殊学級の子は交流級に混じっての入場なのですが、今年は親の希望で特殊学級としての参加になりました。
私としては、交流級の担任の先生とは言葉を交わしたこともないし、それよりはお世話になった特殊学級の先生に名前を呼ばれて、卒業証書を受け取って欲しかったので。でも、もう一人のお母さんがそれがイヤというなら仕方がないなと思っていたのですが、幸いもう一人のお母さんも同じ考えでした。
それでも、いざ入場をしてくるのを見ると、2人だけしかいないのでやはり目立ちます。でも、2人とも堂々としていました。おかげで写真もばっちり撮れました!(・・と思う)
でも、こういう形式を気にしないで受け入れるようになるのって、時間がかかるかもしれませんね。交流の仲間に入れてもらえないのでは?と思う人もいるかもしれません。でも、そうではないんです。5組というクラスも存在していて、こんなに立派に成長したんだよと、みんなに伝えたかったのかもしれない・・・などと思いつつ、ルカを見守っておりました。
式は無事済んで、うん?これで終わり?なんか歌をたくさんうたうっていってたけど・・・と思っていたら、引き続きセレモニーとして、3年の歌が始まりました。
1番後ろに並んでいたはずのルカ。みんな一斉に回れ右をして、保護者席を向きました。そして・・・ルカは1番前。あーっ、このことだったんだ。
「一番後ろのはずが、くるっと回って一番前になるんだよ」とルカは前から言っていたのです。
3年生の女子はほとんど泣いてます。ルカもうつむき加減。私を見つけて照れくさそうです。
そしてお別れの歌・・・・
式の歌も含めて、4曲もうたいました。ルカの中学は合唱に熱心な学校で、全員合唱部?と思えるくらい、すばらしい合唱を聞かせてくれました。
この時は保護者席からも鼻水をすする声があちこちから聞こえておりました。
式が終わり、校門で在校生や先生に見送られての下校となりました。
ルカの後輩達も来てくれて、大泣きしてしまう子もいました。
いい仲間だったよね。この仲間がいたから、交流に行ってがんばることもできたんだよね。
そして先生。小学校6年の時、この中学を見学に来て、現在の先生の指導ぶりを見て、直感的にこの先生がいたら大丈夫かもしれない・・と私は思ったのです。見事、その直感はあたり、私がルカの障害について話すと、すすんで勉強してくれました。なによりも、特殊教育に燃えてます!!といってくださったこと、私はほんとにうれしかったのです。いままで、真剣にそう言ってくれた人はいなかったから。(パフォーマンスではいたけれど)
かくして、卒業式は無事おわりました。
卒業式の2日前に、合唱コンクールがありました。
交流級に混じってルカも練習しました。
コンクールの朝、私がうっかり「賞がとれるといいね」と言ってしまいました。
しまった!そんなことを言ってとれなかった時のフォローが大変になると思い、あわてて「でも、賞がとれなくても気にしないでね」と付け加えました。
そしたらルカは「うん、わかってるよ。賞がとれるかどうかでなくて、今まで練習をがんばったことが大事なんだよね。」と答えたのです。
なんでも1番、100点じゃないと満足できなかったルカ。結果でしか自分を評価できなかったルカ。
でも、今は違います。この言葉が彼の3年間の成長を物語っているんだなと、ルカの後ろ姿が大きくみえました。
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