家族旅行
ルカの成長を頼もしく思っている私ですが、全然変わらないなあと、がっくりすることも多いものです。
家の中で、家族と過ごしているとき、特に私と二人でいるときなどは、非常に落ち着いているのですが、来客があったり、家族でどこかへ外出したりすると、動揺してしまうのか、ルカもまだまだだなあという思いにさせられることが、とても多いのです。
特に、私や夫の実家にいったときなどは、祖父母の一貫性のない対応に振り回され、加えて私が祖父母の手前、毅然とした態度がとりにくいので、ルカの能力の一番低い部分が、出てしまうようです。
例えば・・・・
○声が大きくなる。・・・もともと、声が大きい子なので、普段も悩みの種なのですが、「うわー、ぎゃー」など、やたらリアクションが派手になり、周りが騒然とした空気に包まれてしまうのです。
○落ち着きなく、部屋をうろうろしたり、部屋のものをやたらさわったりする。
○質問に対して、まともに答えない・・・ルカは、まともだと思っているのかもしれませんが、それとも奇をてらおうとしているのか?普段は受け答えできることでも、意味不明な答えをして、周りを寒くしてしまうのです。
○兄弟げんかが多くなる・・・これは、ルカ1人の問題ではなく、妹もやはり普段にないことがあると、ある程度興奮してしまうので、ルカだけでなく妹の成長もまたなくてはならない問題だとは思います。しかし、ルカがルカだから、妹も影響されてしまっていると言えなくもありません。
情報処理の未熟さ?なのか、小さい子供でも良くあることなのかもしれませんが、ルカはもう中学生なので、ルカ自身は変わらなくても、周りに与える印象は年をとるごとに、変わっていくんだろうなあと思います。
○自分で作った決まり事を皆にも守るよう強要する。・・・例えば、道路を歩くときは一番最初が僕、そして妹といった具合に決めて、その通り並ばないと怒り出してしまい、せっかくの楽しい外出が、さんざんなものになってしまうことも多々ありました。
○計画表をつくり、その通り事が進まないと落ち込む・・・家族での旅行の時は、学校の旅行のように、"しおり"にかかれているような具合には、進みません。
計画通り進むことが、いいことだと信じているルカは、その通りに進まないと「ぼくは、どうして計画通り進められないんだろう」と、自分を責めてしまうような事が何度かありました。
まあ、こんな感じですかねえ。
それにしても、こうやって整理していくと、次から次へと良く出てくるもんだと、驚いてしまいます。
上記に加えて、(上記のなかでは、この頃はほとんどなくなっているものもありますが・・・)中学生になった頃から、音や臭いに敏感になってしまいました。
例えば・・・・
○消防署のサイレンの音・・・これは、一度消防署の前を通ったときに、運悪くサイレンがけたたましく鳴ってしまい、それ以来サイレンの音が苦手になってしまったのです。
ルカがサイレンが苦手になって初めて知ったのですが、消防署っていたるところにあるんですね。
彼は、消防署の近くを通るとサイレンが鳴ったときのショックがよみがえるようで、消防署をさけて歩くようなっています。
最寄りのバス停の近くに消防署があるため、ひとつ先のバス停を利用したり、道路を迂回したりと、大変な思いをしています。
しかし、一方で、消防署の裏の神社でお祭りがあったときは、平気で出かけていくのですから、不思議です。
お祭りの時は、サイレンはならないと無意識のうちに自分に思いこませているのかしら・・・・
○小さい子供の泣き声・・・私たちのマンションの前は公園で、たくさんの小さい子供達が遊びに来ます。
当然小さい子供の泣き叫ぶ声もよく聞こえてくるのですが、この頃ルカはきーきーという泣き声が、耳に響くらしく、耳をふさいで苦痛な顔をしています。
「ガキはいやだなあ」などと言っているのです。
あなたの小さい頃を振り返ってみたら、公園の子供の泣き声なんてまだまだ・・と思ってしまう私ですが、本人は苦痛なのですから、仕方ありませんね。
それでも、どうして泣いているのか理由がわかると気にならなくなる事もあるようです。
子供の存在そのものがルカにとっては、うっとうしいこともあるようです。
規則を守ることが当然のルカの立場からすると、大人の言うことを聞かず、泣きさけぶ子供の気持ちは、なかなか理解できないのでしょう。
○たばこの煙の臭い・・・我が家では、喫煙する人はいないのですが、窓をあけているとよその家のたばこの煙が入ってくることが、一日に何度もあります。
ルカは、そのたびに大騒ぎで、「オエー」と言って、窓を閉めに行きます。家の中だけなら良いのですが、外を歩いていてもたばこを吸っている人の目の前で、「オエー」とやるので、困っています。
きっかけは、たばこを吸うとガンになると知ってからだと、思うのですが・・・・
こんな風にルカの苦手なものを書いていると、単に音や臭いに敏感なのではなく、ルカの場合は何かの状況と結びついて苦手なものが増えているのだと、改めて思います。
子供の泣き声では、幼児虐待のテレビをみてから、敏感になってきている気がします。
時々近所で子供が叱られている声が聞こえると、子供がいじめられているのではないかと、とても不安になるようです。
音や臭いによって、ルカの頭の中には、いやな場面が鮮明に映し出されてしまうのでしょうか?
まことに、自閉症の世界は奥が深いもんだなあ・・・・・・
おっと! 家族旅行の話をするつもりだったのに、話が横道にそれてしまいました。
それでは、本題に入ります。
私の実家が東北にあるので、毎年夏は1週間程度、郷里で過ごすことになっています。
毎年1回と言うことで、実家での過ごし方が、ルカの成長のバロメーターになっているようなところもあります。
さて、今年は・・・・
旅行の前に、しおりを作るのが、習慣になっていたルカですが、今年もワープロで作ると言い出しました。
「しおりのとおり、実行できなくても文句言わないでよ」
と、私がルカに言うと、
「大丈夫!! しおりの最後に"予定は変更することがあります"って書いておけばいいんだよ」
と、ルカ。
なるほど・・・・リハセンターの心理の先生が言いそうなことだと、感心してしまいました。
結局、予定がなかなか決まらず、しおりを作ることもなく、帰省の日になってしまいましたが、ルカはあまり気にしていなかったようです。
大まかな、スケジュールの他は、直前に伝えてもあまり混乱はないようです。
新幹線の中でも、郷里に到着して、祖父母に会ったときも、以前よりもだいぶ落ち着いて、過ごすことが出来ました。
ルカ専用の部屋を用意してもらったことも、落ち着けた原因でしょう。
昨年まで、家族4人同じ部屋だったのですが、ルカが同じ部屋では眠れないとごねたので、今年は実家の母も気をきかしてくれて、ルカだけ別の部屋にしてくれました。
おかげで、皆と一緒にいて気分が高まりそうになるときは、自分の部屋へ行くという、家での生活と同様の対処ができました。
ルカもやっと実力がついてきたか!と、うれしくなりました。
しかし、実家の母は
「ルカをみていると、すごく難しい言葉を話して、大人みたいに見えるときと、ちょっとしたしぐさなんだけど、精薄(精神遅滞)の子に見えてしまうときがあるよねえ。何でなの?不思議でしょうがない」
と、首をかしげていました。
また、ルカは自分の荷物の整頓などきれいにできるようになったのですが、ティッシュ1枚でも自分のものがなくなると、気になって仕方なくなってしまいます。
実家でも、1度そんなことがあって、
「ルカが特別な病気(障害)を持っているってわかっているから、しょうがないなって思うけど、知らなかったら、なんて変なやつだって思われちゃうよねえー」
と、言っていました。
母は、何でもストレートに言う人なので、このような貴重な感想が聞けたのですが、やはりルカがアスペルガーであるということは、これから先も周囲の人に伝えていかなければならないなあと、思いました。
そういえば、ルカが1歳にもならないときに、母が
「この子、全然まねしないよ。"オテテシャンシャン"も"オツムテンテン"もしない。おかしいなあ」
と、言ってましたっけ・・・・
あまり教養があるとは言えない母ですが、ルカがおかしいと最初に気づいたのは、私よりも母だったのかもしれません。
ところで、郷里では祖父母をはじめ、お小遣いをいただくことが多かったのですが、ルカには不思議な事だったようで、
「ここの人たちは、何でこんなに優しいの?」
と、困惑気味でした。
ルカは小遣いにはあまり欲がないので、たくさんもらってもどうしていいかわからなくなるようです。
この頃は、
「僕が、大きくなったときの生活費にする」
と言いだし、余分なお金は私が預かるようになりました。
ルカの将来のために、大切にとっておこう!
使い込みしないよう、気をつけます・・・・・
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