合格
先週、市立高等養護学校を受験しました。
私たちの市では、公立の高等養護学校は県立と市立の2種類があります。
県立はいわゆる普通の養護学校と言いますか、小学部からあって、そこからエスカレーター式で行く子と、中学までは特殊学級でやって来た子が高等部になって移るケースとがあります。つまり、障害の程度がさまざまということです。
そして、市立の養護学校は、これはこの市の独自のものだと思うのですが、軽度の知的障害者を対象とした高等部のみの養護学校です。軽度の知的障害者対象と言ってもあくまでも一応の基準で、境界線の子でも受験資格があります。卒業後に一般就労ができる(今は不景気で難しくなってはいますが)というのが、ここのウリです。
ですから、入ってしまえばある程度将来路頭に迷うことはなくなります。が・・・市内に一校しかなく、選抜試験があります。毎年、希望者が定員数を超えるため、何人かは涙を飲む結果となります・・・また定員に満たなくても、不的確と判断される場合もあります。
受験者は一応受験前に、市の養護教育センターに行き、進路相談を受けます。例年、そこの先生の判断で受験はあきらめた方が・・・みたいなことを言われ、おとなしくそれに従い受験しない人もいるので、定員より若干オーバーする程度みたいですが、今年はあきらめる人が少なかったらしく、定員よりかなりオーバーしたままで(48人前後の募集に70人くらいの応募だったような?)受験の日を迎えることとなりました。
私は、それこそルカの障害がわかった日から、その養護学校の存在を知り、入れたらいいなあと夢に描いていました。
私の予想以上にルカは成長してくれて、中3になった今、受験が可能な子どもになってくれました。しかし・・・予想以上に伸びてしまったところもあって、軽度の知的障害ということに合致しなしくなってしまいました。幸い障害者手帳は取れているですが、そこらへん、高等養護の先生達がどのように判断するのだろうか? 試験の時に動揺してしまって調子を崩すことも考えられ、絶対合格ということは、言い切れません・・・
そこで、第2志望校を決めておかないといけないので、いろいろと検討したのですが、ないのです。
県立の養護学校では多分、ルカにあった授業というのは期待できないし、かといって、普通高校に入れるわけでもなく、通信制のサポート校等は学費がとても高い・・・それに卒業したあとの保障がなにもないのです。
教育委員会からは、高等養護を受ける場合は2次希望を出しなさい、というお達しがあるにもかかわらず、担任と話し合って、一本で行きましょう!という、無謀な賭に挑戦することとなりました・・・
ほんとに、境界線児の進路は厳しい〜。
さて、試験の内容は、面接になんと本人30分、親30分・・・いろいろ聞かれましたねー。
ここの学校を選んだ理由とか、子どもの短所・長所とかは普通の質問ですが、印象に残ったのは、「養護学校ということを納得しているか」という質問。つまり親は自分の子どもを障害児として認めてるかみたいなところです。これは子どもも聞かれたようです・・・ということは受験するまでにはある程度自分の障害のことがわかってないといけないということなのか。ルカは幸い前から話し合っていたことなので、納得しているということを面接官に伝えられたようです。
それから、中学でいじめられたりということはなかったか、という質問。これも親と子供両方に聞かれました。ルカは「答えたくありません」という返事だったそうです。
私たち(ルカパパもこの日は来てくれました!)は小さいいじめはあったということを話しました。
すると面接官が「中学時代にいじめられた子の中には、養護学校に入って自分より弱い子を逆にいじめてしまうというケースがありますが・・・」と遠回しな質問。それまでだいたい私が質問にこたえていたのですが、わたしは質問の意味がわからなくなってしまい、しどろもどろになると、ルカパパがすかさず「うちのルカにはそういうことはないと思います。人に手をあげる事ができない子ですから・・・」とフォローしてくれました。ルカパパを連れてきてよかったと思った瞬間でした。
ながーい面接が終わり、親はそれからずーっと子どもの検査がおわるまで、待機でした。
子どもは10人のグループに別れ、運動・作業・集団の検査がありました。そして気になるのが「待機」というのがあって、自由に図書室で待つということだったのですが、試験官はいるということで一応チェックが入っていたのでしょうか?
また、集団という検査があると知ったとき(試験前日)ルカはビビリました。
「そんな初めてあう人達と、一緒になにかやるなんてことできない!」
しかし、当日は案外落ち着いて、受ける事ができたようです。内容は、バスケットボールを体育いっぱいに散らかして、それをみんなでかたずけるというもの。「あれは全然意味のないことで、俺はいやだったよ・・・」とルカ。それと体育館をみんなでモップがけするということもやったそうです。そういう集団行動からはみ出ている子がいたらチェック!ということでしょうか。
幸い、ルカは大きな乱れもなく、朝8時30分から午後4時までの試験を終えました。
しかし、落ち着いていたのはルカだけではありませんでした。試験は人数が多いので二日に分けてやったので、ルカと同じ日の子達は30人くらいだったかな? 昼の休憩時間でさえ、乱れる子は皆無でした。このなかから、誰を落とすつもりなんだろう?とびっくりでした。
そして、もう一つ感じた事、試験だというのに学力テストがなかった!
それらしきものは、面接の時自分と保護者の名前・住所を書いただけ。私としては、計算問題くらいはやって欲しかったような気も・・・
でも将来職業につくことに、学校の成績は関係ない・・・というか重要視されないということ。それ以上に社会性の面が問われるのだということをしみじみ感じました。
さて、今週発表の日がやって来ました。
合格通知は各家庭に郵送されるということで、その通知が届くはずの日。私は自分でも予想以上に心臓がドキドキしてしまって、何度も深呼吸しながら郵便配達がくるのを首をながーくして、待っておりました。
そしてその日の午後、幸運にも合格通知を手にすることができました。学校から戻ったルカも「やったー」と大喜び。
早速、担任に電話。今までとても親身になって進路相談にのってくれていました。第2希望を出していないことを私と同様、不安に思っていたに違いありません。「あー、よかった!」との声に私も胸が熱くなりました。そして、ルカ・・・あれ?涙ぐんでいる・・・
それから、リハセンターや心配してくれたお友達に電話。みんなとても喜んでくれました。
みんなに支えられているんだなあーと実感。
そして最後はルカパパ。夜帰宅後、ルカと抱き合って喜んでおりました。
しかし・・・喜ぶ一方でがっくりしている人もいるはず。市内に一校は少ないですよね。それでも私たちの市にはあるからいいけど、なくて行くところがない子たちがたくさんいます。高校進学にあたって、もっともっと軽度の障害の子の通えるところを増やす必要があることを実感しました。
そうそう、ミミももちろん喜んでくれました。郵便ポストから通知の手紙を持ってきてくれたのはミミでした。「よかったー」
そしてしばらくして、「ねえ、合格祝いに何かおいしいもの食べるよね!」
抜け目のないミミ。
しかしルカは言った。
「いや、お祝いは中学卒業の時にして。今はまだ中学生だから、こんな半端なときにやるわけにはいかない」
そうですか・・・君のこだわりはなかなか手ごわい。
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