・近況報告 その65


募金

ルカは電車の旅にホントにはまったようで、今度は千葉の蘇我駅というところまで行きました。
私たち家族もだいぶ慣れてきて、あまり心配もしなくなりました。
この日も、無事電車の旅を終えて帰ってきました。
が・・・
ルカが深刻に顔をして「お母さん、怒らないでね」
と、私に話しかけてきました。
「途中、東京駅も見てきたんだけど・・・」とルカ。
ルカはドラマ「私を旅館に連れてって」を見ていたときに、東京駅が映り、同じところに行ってみたいと言っていたのです。
「募金しているひとに会ってしまって、募金した」
えっ、つ・ついにひっかかったか!と内心思う私。
「で、いくら払ったの?」と私がドキドキして聞くと、
「10円! もったいなかったよなあ・・・」とルカ。
な・なーんだ、10円かー。ホッと安堵のため息の私です。
しかし、ルカにとって10円は大金だったのか、後悔しきりの様子。
なにより「募金」なんてことがあるなんて、ルカにとっては予想外のできごとでかなりの動揺でした。
なんの募金だった?と聞いても、動揺していたルカは何も覚えてない様子でした。
「ああいうときは、どうやってことわればいいの?」と聞かれ、私も複雑な心境。
本来、募金ということはいいことであるはず・・・しかし、募金と称して実はタチの悪い勧誘だったり、油断のならない世の中です。ここはやはり、そういうことにはかかわらないように教えた方がいいだろうと思い、
「話を聞かないで、そのひとから離れるといいんだよ」と答えたのですが、どうやら交差点で募金していたらしく、赤信号で逃げられなかったとのこと。そういうときは無視すればいいと言ったら、
「なんか募金しないと悪いかなあと思って」とルカ。
そうなんだよねー。ルカはそういう人の気持ちが中途半端にわかってしまうのです。
そういう同情する気持ちがあるのなら、もっと大金を払いそうなものですが、払ったのはたったの10円。
それもルカらしい。でも10円を払ったことで、ひとまず難を逃れたようなので、上出来の対処の仕方だったのでは?と思いました。
それでもルカは、10円募金したことで、帰りの交通費が足りなくなるのではと、心配でたまらなかったようです。
どうやら彼には、適切な金銭感覚が身に付いてないようで、たった10円の違いで交通費にはあまり影響がないように思えるのですが、彼にはその見通しが立たないようで、ずっと不安な思いで帰ってきたようでした。
しかも、そんなにきっちり計算してお金を持っていっているわけでもないのです。
出かける前に駅すぱあとで、路線は徹底的に調べるルカ。
それなのに料金に関してはとってもどんぶり勘定で、2000円位かな?などと適当なことをいうのです。
それじゃあ足りないと私とルカパパがいろいろ説明して、いつもルカが考えているお金の倍の金額は持たせるようにしています。
なんとも、理屈では説明しがたいヤツです・・・。

しかし、こういうたぐいの詐欺?(ホントに純粋な募金だったかもしれませんが)の経験は、誰にでもあるもの・・・。
実は私も高校生の時、一人で留守番していた際に「交通遺児のためにご協力を」という訪問販売にひっかかり、小遣いをはたいて100グラム5000円のお茶を買わされたことがあります。
しばらくたって、「交通遺児の募金を装った詐欺行為」と新聞にでかでかとのっていました。
お茶を売りに来た人は当時の私と同じ年頃の男の子でした。自分が情けなくもあり、でも自分と同じ年頃の子がなんであんなことを・・・としばらく悩んだものでした。

ルカもこれからいろいろな経験をしていくんだろうなと、自分を重ねて思う私です。

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