ルカのマイブーム
アスペルガーの人は、独特の趣味を持つ方が多いと聞いていますが、ルカの今までの趣味の変遷をたどってみても、ふーむなるほど・・・と、考えさせられるものがあります。
例えば、ルカの一番長く続いている趣味は、地図を眺めながら、駅名をノートに書いていくことです。
地図をその通り書き写すのではなく、架空の駅名を作り、路線図にどんどん書き足していくのです。
そして、妙なことにこの頃、彼はこれを秘密にするようになりました。
私の足音が聞こえると、あわててルカ愛用のノートを閉じるのです。
きっと、ノートの中には、駅の路線図のほかにも、見られたくないものが書かれているに違いない。
例えば、クラスの女の子の名前一覧表とか、アニメの切り抜きとか、とってもくだらない自作の4コママンガとか・・・・
いいえ!! 決して私は、ルカのノートを無断で見るなんて、そんなこと・・・・・
このように、ルカの趣味も一風変わっているのですが、子供らしい趣味もたくさんあります。
アニメで好きなのは、なんと言ってもポケモン、ポケモンカードがはやったときは、必死に買い集めてました。
もちろん、テレビゲームも大好きで、攻略本を見ながら、先へ進んでいます。
テレビゲームが下手なのに、好きな私は、ルカに手伝ってもらって、やっとクリアなんてことがあります。
この時ばかりは、我が息子をつい尊敬の眼差しで見てしまいます。
それから、ヨーヨーが、はやった頃は、夢中になって新しい技に挑戦してたっけ・・・・
そして、今、ルカがはまっているのは、なんと野球。
スポーツ観戦など全然興味のなかったルカですが、ルカの好きなギャグマンガに、野球の話がでてくるらしく、それで興味を持つようになったのです。
暑い夏の夜、麦茶片手に
「やった、ホームラン」「はしれ、はしれ」
とか言って、大はしゃぎ。
まるで、どっかのおやじのよう・・・・
特に、お気に入りのチームがあるわけではないのですが、テレビは巨人戦が多いので、必然的に巨人のことにくわしくなっていくようです。(私も昔そうでした)
ゲームのルールも、はじめはわからなかったようですが、この頃は、わからない言葉がでてくると、国語辞典で自分で調べ(国語辞典に意外にくわしく載っているのです。)、だいたいわかるようになってきました。
しかし、ここからが、ルカらしい興味なのですが、野球選手の年齢に興味があり、選手がでてくると、この人若いのかなあ、何歳?などと、周囲に質問したりします。
そんなの知るか!!
この頃は、10代の若者らしく? 若いことに価値があるような考えをするようになりました。
ちょっと、横道にそれますが、ルカはひげがのびてくると、おじさんになってしまうと、思いこんでいるので、顔のひげののび具合をとても気にしています。
ルカが無精ひげをなかなか剃ってくれないので、
「そんなにひげをはやしていると、おじさんになっちゃうよ」
と、私が言ってしまったことが原因なのですが・・・・・
ほんとに、ルカとの会話には、その一言が命取りになりかねません。
まあ、ともかく・・・
野球を見るだけでなく、バットを持ち出して、素振りの練習までするようになりました。
このまま、野球好きの元気な少年になってくれれば・・・・・
と、以前の私なら期待もしたでしょう。
ルカが欲しいとも言わないのに、グローブなんか買ったに違いない。
しかし、数々の経験から、ルカの趣味が長続きしないことを、私は知ってしまったのです。
その昔、将棋に凝ったことがあったっけ。家庭科の交流を始めたときはなんと、裁縫をしたいといいだしたこともあった。
私は、そのたびに、将来的に何らかの役に立てばと、なんとか趣味が特技になるようにと、願ったものです。
しかし、ルカにとっては、まさに<マイブーム>で、ブームが去ってしまえば、それでおしまいなのです。
案の定、ある朝、
「これもうしまっちゃう」
といって、バットを物置にしまってしまいました。
長続きしていることといえば、少年マガジンを読むこと、秘密のノートになにやら、書き込むこと、ブランコぐらいでしょうか。
でも、彼は彼なりに、日々の生活には満足しており、
「ずーっと部屋にばかりいるから、外に行って来る」
と、私に告げて、公園のブランコに乗りにいったりと、自己コントロールをしているようです。
いつの日か、そんな日はたぶんこないのかもしれないけれど、自分の夢中になっていることを、誰かと分かち合えるようになったらいいのに・・・・・と、ふと、願ってしまう母でした。
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