・近況報告 その46


清書

五月も半ばを過ぎると、気温もどんどんあがって、部屋の窓も全開。
この何気ない風景、我が家ではちょっと大変です。
戸締まりにうるさいルカ。
学校から帰ってきて、自分の部屋の窓が開いていると、
「お母さん、前も言ったと思うけど、俺の部屋の窓を開けるのやめて!」
と、抗議されてしまいます。
そんなこと言ったって、部屋の換気を良くしないと・・・。
特にこのごろルカの部屋に入ると、男くさいというか、汗くさいというか、とにかく窓を開けたくなるのです。
仕方ない・・・ルカが学校から帰ってくる前に、窓を閉めるとするか・・・めんどくさーい。

前置きはこれくらいにして、今回の話題。
きっと、あれはルカとミミが話していて、ミミがちょっとルカに対して、きつい事を言った後です。
いきなり、胸をどんどんと拳でたたき、
「心臓の清書、清書」と、ルカが自分に言い聞かせているのです。
「えっ、清書って何?」と私。
ルカの話によると、きついことを言われたときとか、落ち込んだときは、胸をどんどんたたいて、平常心をとりもどすようにするんだとか。
「これを、心臓の清書という」と、ルカはそのネーミングが非常に気に入っている様子でした。
実は、これは私が知らなかっただけで、落ち込んで自分の部屋に行ったときは、たいていやっているとの事でした。
「まあ、ルカがそれで落ち着くんならいいけど、人前ではやらないほうがいいよ。周りの人がびっくりするから。それから、あんまり強くやってけがをしないようにね」と一応、釘をさしておきました。
人前でやらないようにということには、ルカも納得。でも、力の加減については、難しいことのようでした・・・
心臓の清書以外にも、ルカは苦手な音・声を聞いてしまったら、耳を人差し指で押さえているそうで、
「これを、耳の清書という」と、ルカ。
それで気分がやわらぐのなら、これはいい方法かもしれません。

たぶん、中学校で習字をやっているときに、「清書する」ということを覚えたのだと思うのですが、自分にとって混乱のもととなる事柄が起きたとき、自分の気持ちを整理するためにする行為という、意味なのでしょう。
字を書き損じてしまったときに、あたらしく書き直す時の気持ちに似ているのでしょうか?

ところで、胸の真ん中あたりをたたいているルカを見ながら、ミミが一言。
「お兄ちゃん、心臓ってさー、左にあるんだよ。そこ、場所が違うんじゃない?」
「えっ、真ん中じゃないの?」と、ルカはぴっくり。

以前は、「私のせいでお兄ちゃんが・・・」と、ベソをかいていたミミでしたが、 ルカの突飛な行動にも、もはや動じなくなっているようです。

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