・近況報告 その4



7月13日
 TBSの「君が教えたくれたこと」を、見ていたとき、主人公が
「私は、過去にあったことを全部覚えている。忘れることができないの」
という、シーンがありました。
私はそれを聞いて、
「確かにルカも、そういうところがあるけれど、自閉症にしちゃあ、記憶力も曖昧で 忘れることも多いよねー。全く、何でもかんでも中途半端なやつ・・・」
と、思っていました。
たぶん、その頃テストの時期で、ルカが歴史をなかなか暗記出来ないことに、いらだっていたのでしょう・・・
でも、やはりルカも、過去の出来事を忘れられず、悩むことがあるようです。

ある日のこと、
「お母さん、聞きたいことがあるんだけど・・」
と、ルカが話しかけてきました。
ルカ 「過去に失敗したことを、削除するにはどうしたらいいの?」
私 「(また始まったと思いながら)例えば?」
ルカ 「この間、電車でお母さんに怒られたこと」
私 「もう、2ヶ月前のことだよね。お母さん忘れちゃった!」
 それは、電車にルカと乗っていたとき、ルカのマナーが、悪かったので、私が厳しく叱ったときの話でした。
 彼は、私に怒られた=失敗してしてしまったことを、いつまでも忘れられないらしく、事あるごとに、私や、周囲の人にそのことを話題にします。
周りは、いい加減うんざりしているのですが・・・・
ルカ 「もう、忘れちゃったの? こんな大事なのに」
私 「時間がたつと、忘れるものなの。」
私は、ずーっと前にも、ルカが、異常なほどこだわっていたある出来事を思い出し、
「そういえば、ハシ事件の話、このごろしないね。時間がたてば、忘れられるんじゃないの?」
ルカ 「なるほど・・・あれは3年前のことだから、電車の話を忘れるのも、3年かかるね」
私は、これ以上話を続ける気がせず、黙っていると、ルカもあきらめたようでした。

しばらくして、私も珍しく、心のゆとりがあったのか、ちょっとルカと会話したくなり、
私 「さっきの電車の話だけど、ルカはそういうことを思い出しているときって、どんな気持ちなの?」
ルカ 「うーん・・・ 前に失敗したことを削除して、失敗を全部なくしたら、僕は、完璧になれるのにって思う。普通の人になれるんじゃないかと思う。・・・・ところで、お母さんからそんな話するのめずらしいね。」
私は、苦笑しながら、
「でも、失敗は、障害をもっていない人だってあるよ。」
と、自分の高校の頃に、1度だけカンニングをし、後々悩んだ話をしました。
ルカ 「カンニング!! それは、ひどい。お母さん、その後どうした?」
私 「2度と、しないようにって、思ったよ。失敗しても、今度は、しないようにすればいいんじゃないの?」
ルカ 「ふーん。ところで、カンニングと、電車のことって、どっちが悪い?」
・・・・・私は、ルカとの会話に潮時を感じ、話を切り上げました。

考えてみれば、反抗期まっただ中の中2の時期に、こんな穏やかな会話が出来るのは、幸せなことなのかも しれません。
うっかり、切り上げるときを逃すと、不毛な?会話が延々と続くことになるので、ある程度の緊張感は必要ですが・・・・・

それでも、このごろは、ルカと話をしていると、自閉症的なところも含めて、なんかほのぼとしたものを感じてしまいます。
私にゆとりがあるときは、ゆっくりルカの話を聞いてあげたいものだと、思っています。


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