<その3>
6月の下旬は、中間テストでした。
特殊級に通う生徒にとっては、関係のない話と思われがちですが、特殊級でも国語・数学等は、その子供の学習到達度を測るために、テストを実施しています。
それに加えて、ルカは、社会・美術・体育を普通級で授業を受けていますので、その中の社会だけは、普通級と同じようにテストを受けさせてもらっています。
小さい頃から、地図を眺めていることが好きだったルカは、地理・歴史に興味があり、自分からすすんで、交流授業(普通級にいって授業を受けること)に、小学校5年のときから参加しています。
ルカは、知能指数がボーダーの子供ですので、若干の学習の遅れがあります。
アスペルガーの人は、得意領域では抜群の成績を残す方が、たくさんいらっしゃるようですが、ルカはそういうタイプではありません。
だからといって、ルカが全般的に他のアスペルガーの方より、劣っているとは私は思っていません。
テストの成績が良い人が、社会的にも優れた人になるとは限らないのではないでしょうか。
まぁ、それはさておき・・・・・・
小学校の頃は、テストも簡単でルカでも80点ぐらいとれることがありました。
しかし、中学のテストは、さすがに難しい。
できる子とできない子の差をつけなくてはなりませんから。
問題数も多く、問題の出し方も複雑です。
それまでテスト勉強などしたことのないルカでしたが、中学に入ってからは、一応やっています。
それでも、30点ぐらいしかとれません。
始め、点数を見たときは、私も、つい怖い顔をしてしまって・・・・・。
ルカに悲しい思いをさせてしまいました。
でも、問題を見て、今のルカではこれが精一杯。
むしろ、ほめてやるべきだと考え直し、ルカには0点じゃなかったらいいよ、と言ってあります。
ルカも、「そうだよね。ドラエモンののび太よりは、ましだからいいっか」と言ってました。
今回も、同じような点数でしたが、担任の先生が連絡帳におもしろいことを書いてくれました。
「ルカ君は、記号を選ぶ問題でも、適当に勘で書くことをしません。
適当に書いてもあたることがあるので、そういう方法を教えようかとも思ったのですが、それでは、ルカ君のあまりにも純粋な気持ちをふみにじるような気がして・・・思い止まりました。」と。
結局の所、ルカは大学進学を考えているわけでもないので、テストの点数を気にする必要などないのです。
でも、彼は、まじめです。
今度も、きちんとテストを受けられるように、勉強しようとはりきっています。
一時、何でも完璧じゃないと気が済まない時期があり、テストも100点じゃないとかなり落ち込んだときもあったようですが、この頃は、いい意味で「まぁ、いいか」と考えられるようになりました。
それでも、勉強をしようと思うのは、やはり、好きな科目だからなのでしょう。
特殊級にいると、どうしても勉強では一番できてしまうので、ルカはお山の大将になりがちです。
実は、そうではないことが、テストすることによってわかってきたようです。
それは、本人にとって少し、つらいことですが、将来に向けて、自分の適性を知る意味では、重要なことではないでしょうか。
ルカも、依然は大学に入る、弁護士になるなど、言っていたのですが、今は、そうは思っていません。
先日、ピアノの運送屋さんが我が家にきて、汗を流してピアノを運んでいるのを見て、「僕、ああいう仕事はどうかなあ」と、私に聞きました。
「うーん。体力がいるから、あまり長くやれる仕事じゃないかもね。いろいろ、考えてみようね」と、私は、答えながら、将来のことを一生懸命考えているルカを頼もしく思いました。
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