コンプレックス
学校からの連絡帳に「ルカ君は異性の話になると、とたんに興味がないようなそぶりをする」というような事が書いてありました。
連絡帳はルカのチェックが入るので私もめったな返事は出来ず「詳しいお話は面談の時にでも」と書きました。
しかし、そう書きながら「困ったな〜」という気持ちになってしまいました。
なぜかというと、日頃、ルカは自分の気持ちをいろいろと私に伝えてくれるので、こちらもルカの気持ちが把握しやすいのですが、性的なことに関しては徹底して秘密主義なのです。
それはある意味、いい傾向だとは思うのですが、ルカが異性に対してどんな感情を持ち合わせているのかは、わたしとしては謎です。
それに加えて、アスペの子供達の発達の過程についてはある程度他人に説明できるのですが、思春期以降の文献はまだまだ少なく、一般的なことも説明しにくい状況にあります。
一昔前なら自閉症の人の結婚の可能性は限りなくゼロに近いだろうと言われてきました。ところが自閉症のとらえ方が広義になってきて、アスペの人も含めると、実際に結婚生活をしている人が存在することがわかってきたようです。
それを我が子にあてはめようとしても、私としては信じられない話ですが。
それじゃー、見方を変えて自閉症の障害のない人たちの恋愛感情というものを考えてみようと思っても、私にとっては、なんせとおーい、とお〜〜い昔の出来事のような気がして、やっぱりわからないことが多いのです。
高等養護学校の子達も、一般の高校に通っている子供達と同じように恋愛ということには非常に興味があり、一日中彼のことで頭がいっぱい!という生徒が少なからずいるようなのですが、私はそのことにも違和感を覚えしまうのです。
ルカは自閉症ということで発達のアンバランス、興味の偏りがあるわけで、もう少し友達や異性に関して興味を持っていいのでは?と思われがちです。
一方で自閉症の障害のない生徒達(他の発達障害を持つ)の恋愛に対する興味は、思春期の正常な発達と評価されがちです。
でも、その子供の全体的な発達からみると、四六時中恋愛のことだけが頭のなかにあるというのは、一種の興味の偏り・・・発達のアンバランスとも考えられるんじゃないかなー、等といろいろ考えてみるわけです。
まあそれはともかく、ここはやはりルカに聞くしかないと思い、ルカと話をしてみました。
「ルカは女の子とつきあってみたいとか、そういう気持ちはないの?」
ルカ「ない。結婚もしない」
「どうして?」
ルカ「つまり、俺は女子に嫌われる性格なんだ。それに、結婚しても子供育てられないし・・・子供と一緒の生活は出来ないわけだから(ルカは幼児の声が苦手なので)」
ということで、どうやら自分は女性とつきあう資格のない人間と決めつけてしまっているようです。
でも、それと興味がないというのは別物で、ホントは興味があるが興味をもっても仕方のない事のなので、その気持ちを封印してしまっているとも考えられます。
また、女子の容姿にはすこぶる興味があることに罪悪感があるのかもしれません。
女子とつきあうということがわからない漠とした不安というものもあるでしょう。
それが、私や周囲の人に対しても「そんなことには興味が全くない」と必要以上に言い張ってしまう原因なのでしょうか?
そういえば昔、ルカには好きな子がいたハズです・・・一緒に写っていた写真を大切にしていたようだし、そのことで交流級のクラスの子がはやし立てると言っていた時期がありました。
相手の子は障害のない子で、私はその子に迷惑がかかっているのではと心配したもです。
もしかして、その一件で女子には嫌われていると思いこむような事件があったのだろうか?
というわけで、コンプレックスいっぱいのルカなのです。
「こんな俺」という言葉にはいろんなことが隠されているのでしょうね。
できれば、そんなコンプレックスを抱えているのはルカだけではないんだから、そんなにいろんなことを隠さないで話して欲しいけど、親がいつまでも介入できることでもなさそうです。
そういえば、友達の事に関しても「俺に友達ができるわけはない」と言っていた時期がありましたが、今は友達を作ることに関しての拒絶はなくなりました。
異性に関しても、成長するにつれていろいろと変わっていくのかもしれません。
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