・近況報告 その106


手帳

夏休みのルカの楽しみは、やはり電車の旅。
普段は行けないところへ、遠出をしてみようと計画中です。
合計4回行くそうで、新幹線を使う予定もあるとか。
うーむ。
お金はどうする?と心配な私ですが、ルカはちいさい頃から貯めていたお年玉がかなりありまして、そこから出そうという心づもりのようでした。
とはいえ、これから長く続くであろう電車の旅。できるだけ安くいく工夫というものを考えた方がよさそうです。
そこで、割引切符等々いろいろ調べることになりました。
青春○×切符とか・・・でもこれは新幹線には使えないし、回数を多く行かないといけません。
いろいろ考えて思いついたのが愛の手帳(知的障害者がもっている手帳です。ルカの市ではボーダーの子でももらえます。) JRだと100km以上なら半額になります。
実は、ルカが中学のときからこの愛の手帳の使用を考えないでもなかったのですが、各鉄道会社によっていろいろ基準が違い、なかなか使いこなすのが難しそうでした。
そして何より、ルカが使うことに疑問を感じていたのです。
ルカが中学になったとき、電車賃が子供料金から大人料金になり、親は泣きましたが?本人は大喜びでした。
大人の仲間入りができたような誇らしい気持ちだったのでしょう。
だから、その時のルカにしてみれば、せっかくあこがれの大人料金になったのに、わざわざ手帳をみせて半額の子供料金を払うことは許し難いことでした。
本人に告知してまもないことで、自分の障害をかくしたいと強く思っていた時期でもあります。
でも、現在はそれほどかたくなでもなさそうです。
思い切って「ルカ、手帳を使うとね、100km以上の区間なら半額になるんだよ」と言いました。
ルカ「おおーっ、それはいいね。でも・・・なんで手帳を持っていると半額になるの?」
私「それはそのー・・・障害を持っていても家にばかりいないでどんどん外にでかけましょうってことで・・・」
ルカ「でも、それはさー、身体の不自由な人のためじゃないの?俺は普段も外に出かけられるわけだし」
なかなか鋭い。
私(かなりしどろもどろになりながら)「そうだねー、ほらっ、障害があるとね、将来仕事に就いても、なかなか思ったように仕事ができなくて、給料も安くなってしまうんだよ」
ルカ「えっ? それは障害者差別だ!!」
私「違うと思う。給料は仕事ができた分だけ支払われるんだから、仕事ができなかったらもらえないと思う。でも、できない理由が障害があるということだから、その給料の少ない分、普段の生活にあまりお金がかからないように、補助してくれるんだよ」
ルカ「ほー、それなら納得かな。」
こんな説明でいいのか、私もいまだにわかりませんが、とりあえず本人は納得。かくしてめでたく手帳の割引制度を利用するということになりました。
問題は、窓口で手帳を見せて切符を買わないといけないことです。
今回は初めてということで、ルカパパに窓口までは付き添ってもらいました。
運の悪いことに、おばあちゃんが長いこと窓口を占領していたらしく、並んで待つこと20分!だったそうで・・・(なんとかなりませんかねーJRさま・・)
無事切符を買い、ルカパパと別れて、その日予定していた静岡に行きました。
今回は新幹線は使わず、在来線のみです。途中熱海に下車したそうですが、切符を係員に見せて途中下車できたと言ってました。
帰ってきてルカが言った言葉。「なんかさー、障害者割引で乗ると駅員さんがやさしい気がする」・・そうかも知れません。

私は何より、手帳を使うことにルカが抵抗を示さなくなったのが、うれしい。
ルカは高等養護に入って、そういう固さ?がとれてきた気がします。
小1〜中学までルカは個別学級に同級生がいませんでした。彼と同じ年といえば、全部普通級の子供たちだったわけです。
ところが、高等養護に入って同じ年の、自分と同じような状況の子がたくさんいます。
ましてや、手帳は持ってないほうが目立つ世界です。
そういう環境の中で、手帳をつかうということも抵抗なく受け入れられるようになったかなと思います。
それと、自分のお小遣いで行っているので、金銭感覚が身に付いてきて、少しでも節約しようという気になったのかも知れません。
せっかく、いい制度があるわけですから、今後も上手に使って欲しいと思います。

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