・近況報告 その104


実感

この頃のルカの口癖。
「実感がわかない」「実感がわくといいのに」

自閉症の人は想像力がかけているということがいわれますが、「想像力」と一口にいってもなんかぴんと来ないなあ〜というのが、正直なところです。
はじめにルカから「実感」という言葉を聞いたとき、なるほど・・・そういう表現の仕方もあるのかと納得しました。
ルカによると、実際に自分の目で見たもの、触ったものでないと実感がわかなくて、どういうものか想像できないということのようです。
例えば食べ物。
ルカは時々、いろんなものをご飯にかけて食べることがあります。
「ソースにマヨネーズを混ぜてご飯にかけたらどうなるだろうか」とか、ちょっと考えるとおいしくなさそうなのですが、「実際にやってみないとわからない」と言ってかけてしまうのです。
例えばテレビドラマ。
悲しいシーンでも、「もらい泣きはしないなあ・・実感がわかないから」ということになります。
例えば痛み。
「顔をたたいたら痛いよ」と言っても「どんくらい痛いの?」と試してみようとします。
例えば雲。
「雲の上ってどんなものかなあー、あー実際行ってみないとわかんないなあ、実感がわかないなあ」と言っていました。
そうだなあー、雲の上は私も想像つかなかったりするけどね。

ちょっと心配なのは、その実感を求めて、好奇心がわいてしまうことです。
ちょっと変な食べ方をするのは、よそのうちでやらないようにすればまあいいとして、痛みを実感しようとして大けがをされても困ります。
そう言う場合は、ルカにも想像力が全くないわけではないので、少ない想像力をフルに回転させてもらって思いとどまらせなくてはいけません。
いくら実感を得たくても、人としてやってはいけないことがあるわけで、それをやろうとしたとき、思いとどまらせる何かが彼の心に中にあるといいなあと思っています。
それは、私の声かもしれないし・・・先生の声かもしれないし・・・法律かもしれませんが。
それとやっぱりいろいろなを経験を積むということなのかなーと思います。
もう一つは、視覚的な刺激については、やはり実感がわくようです。
例えばテレビゲーム。
これは実感わきすぎ、と言った方がよくて、もうその世界にのめり込んでしまうことがあります。
バーチャルな世界と現実の区別がつかないといった問題も出てきてしまいますね。

ところで・・・この「実感」という言葉から私は自分の幼少の頃を思い出してしまいました。
幼少・・・いや、困ったことにもっと大きくなってからです。
私のちいさい頃はクーラーがなかったので、夏になると扇風機がフル回転でした。
よく親から「手を入れたら指が折れるぞ」と脅かされていたものです。
私はある日ふと、本当に扇風機に手を入れたら怪我するのかなーと疑問に思い(つまり実感を得たかったのか)、突然の思いつきで、指のかわりに鉛筆を、まわっている扇風機の羽根に突っ込んだのでありました。
鉛筆はもちろんこわれました。そしてこれは私の想像を超えた出来事だったのですが、扇風機の羽根も折れてしまいました。私の想像を超える威力でありました。
「おっ、おまえ何を・・・」家族はあまりのことに絶句でした。
普段はしっかりしていると言われていた私。でも、時々突飛なことをして周囲を困惑させていたみたいです・・・
まあね、人間誰でも魔がさすってことあるのよね・・・ルカのことばかり言ってられませんでした。はい、すみませんでした!

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