近況報告その48で、「ルカは就労に対して強い意欲がある」というようなことを書いたので、その感想として送ってこられた質問です。
ここでは、ルカがどうして就労に関心を抱くようになったのかということと、お手伝いのことについてお話しします。
まずお手伝いから。
自閉症の専門家の人たちでも、「お手伝いをやらせて下さい」とアドバイスをする方が、たくさんいらっしゃるように思います。
その理由としては、
家族の一員としての意識がもてるようになること、お手伝いをすることによって、家族が自分を必要としていることを感じられること。(私はこれが一番だと思う)
お手伝いを通して、将来自立するに当たってのいろいろなスキルを身につけること。
日々の生活を規則正しく行うためのアクセントになること。等々、さまざまな理由があげられると思います。
そうか・・・お手伝いは大切なんだーと、私も納得はしているものの、いざ手伝わせて見ると、これはほんとに根気が要ることで、手伝って貰わない方が家事ははかどる!と、何度思ったことか。
やはり、あんまり難しいことはやらせない方が無難でしょう。
お手伝いの内容よりは、「継続」ということに力を入れることをおすすめします。
ルカの場合、小さい頃(幼稚園から小学校低学年)は配膳のお手伝い・・・と言っても茶碗を持たせるとわるおそれがあるので、箸を配る係りをやってもらいました。
それから、ゴミ出し。(ルカママは朝起きてパジャマのままうろうろしてしまうので、外へゴミ出しに行くのが大変なんです。
いまでもゴミ出しは子供達とルカパパの仕事です。)
自分でもいいアイディアだと思ったのが、窓の結露拭き。
乾いた雑巾を持たせて窓を拭かせるだけなのですが、一応雑巾を持ってるので掃除って感じがするような気がして。
雑巾を水につけることから始めると、水遊びになってしまうので、乾いた雑巾をルカに渡すことがミソなのです。
この頃は、”将来に向けての自立”なんて大それたことではなくて、要は自分がそれをやらないと困る人がいるという意識を持たせること。お手伝いをすることによって、家族とのやりとりが増えるようにすること、そんなことが目標だった気がします。
ルカが大きくなるにつれて、お手伝いも変わってきて、お手伝いというよりは、自分のことは自分で・・・という考え方でやってもらいました。
大きくなると、ルカも理屈っぽくなって、自分だけが家事をするような状況には「なんで僕だけ?」と、屁理屈をこねるようになりました。
なので、自分のこと以外の家事をやって貰うときは、ルカと妹と分担制にしました。
いまでもやってもらっているのが、前述のゴミ出しとお風呂掃除と、インコの餌やりぐらいかなあ。
それから、私がいないときのために、料理もすこし覚えて貰いました。といっても、ご飯を炊くこと、ラーメンをつくる、卵焼きをつくる、ぐらいのことです。
卵焼きはルカの大好物。日曜日の朝など、私がいつまでたっても起きないので、ルカはよく一人で卵焼きをつくって、朝御飯を食べています。
・・・・・・皆さん、お気づきですか?
ルカがよそ様の子供より自立しているように見えるとしたら、あんまり家事をしない母のせいかもしれません。
それと、これは私の性格かもしれませんが、あんまり人の世話ってできないんですよね。
ルカが小学校のとき、親子で遠足のようなものがあって、もうそのころはルカもたくましくなっていたので、私はハンドバックぐらいもって、後はみーんな(私の弁当も)ルカのリュックに入れて、集合場所に行きました。
「ルカ君のところはそうだと思いました・・・」と担任の先生が笑ってました。
周りを見ると、みんな逆なのです。重い荷物を持っているのは親で、子供は軽装なんです。
こういう考えが、ルカの自立を促したと考えられるかも。(笑)
ただし、だからといって、子供がなんにもできないころから、なんでも一人でやらせろということではありません。
子供の自立のためといって、ほんとに小さい頃から、放任で育てている人って、実は私の周囲にもいるのですが、そういうことではありません。一人でできるように援助する努力は惜しまないで下さい!!
さて、次です。
ルカはどうして、就労したいと思ったのか?
これは、きっと自閉症でなくても、障害のないお子さんでも、基本的には変わりがないと思います。
思春期が訪れて、大人へのあこがれが強くなって、早く自分も誰にも束縛されず、好き勝手に暮らしたい。
そうするためには、どうすればよいか? そうだ!誰の世話にもならないですむ方法を見つけよう!
と、まあこんな感じのことは、だれでも一度は思うのではないでしょうか。
ルカがこんな考えを抱き始めたのは、やはり障害を告知してからだと思います。
自分には障害があると分かったとき、将来に向けての不安もきっと同時に持ったのだと思います。
どうすれば障害が治るか、それにはお父さんみたいに会社に入って仕事して、結婚して、子供を設けて・・・と、ごく普通の暮らしをすることが、障害を克服することだと、思ったのではないでしょうか。
だから、始めはお父さんのように大学へいくとかいっていたような気がします。
それでも、中学になって、進路指導の時間などがあって、そこで聞く話によると、大学に行くには勉強しなければならないことがわかって、でも、自分は勉強がどうも好きではない・・・というか、いくらやってもわかんなくなることがある・・・
そして、私は私で、ルカは勉強で勝負できる子ではないなと感じていて、酷なようですが、大学は無理でしょうと、早くから本人に伝えていました。
そういう場合は、普通高校ではなくて、将来的に職業に結びつくような高校がいいのではないかと、かなりルカに言った気がします。
ルカはルカで、ほんとは今のままが楽でいいんだけど、あこがれの大人になるには、どうやらそうもいかないらしいと、わかり初めて来たようです。
それと、自分の障害のことも、告知された直後よりは、客観的に考えられるようになって、全部克服するとういうことは、かなり難しいということがわかってたきたようです。
最近「俺のこだわりは、ずっと続く。こだわるのが俺なんだ」というようなことを、私に言ったことがあります。
私が子供に対して、割とはやくから勉強に向いてないと見極めてしまったことに対して、異論があるのは当然でしょう。
私だって、ルカに対してこれでいいのか、迷うことばかりです。
でも、これからは、私ではなくてルカ自身が考えて決めることです。
もし、入った高校があわなければ、またやり直したらいいのです。
ルカの人生だから、ルカが決めればいいことです。
自分(親)の人生と、子供の人生は別物だと・・・そう考えることができたなら、子供は自立できるのかもしれませんね。
私も、そう考えられるように努力したいと思います。