<ルカママより>

障害のある子供を育てているお母さんは、この子はどの程度自立してくれるのか、とても心配なのだと思います。
自立させたいと思うあまり、早くから何でも一人でやらせようと、あせっている感じのお母さんもいるようです。
その一方で、心配のあまり干渉しすぎのお母さんもいて、ちょうどいいつきあい方って、なかなか難しいものです。

私が、ここまで育ててきて言えることは、”焦らず、基本から身につけさせよう”ということかな?
自閉症の子供達は、一度身につけたルールはきちんと守ってくれます。
外出についても、この特性を生かして、初めからルールをきちんと守るよう教えていくと、後が楽なような気がします。

ルカの場合は、落ち着きのない子だったので、小学校1年の頃は、ずっと私が学校の送迎をやってました。
妹の幼稚園のお迎えもあって、ちょっときびしい時代だったと思います。
留守番に関しては、妹と一緒に1年生のころからできてました。
ただ、この頃、ドアに鍵がかかっていることに恐怖を感じていて、自分が入ろうと思っているのに、ドアに鍵がかかっていると、もう、その時点で、パニックになっていました。
手先が不器用だったので、鍵の使い方も下手で、根気よく、鍵の開け方を教えました。

小学校2年の頃から、学校に一人でいけるようになりました。
1年のときの送迎の際に、しつこく交通のルールは教えたつもりです。

自転車は、5歳くらいから一人で乗れていましたが、自宅前の公園で楽しむ程度でした。
小学校4年くらいから、一般の道路に出ていけたと思います。
このときも、近くのスーパーに一緒に買い物に自転車で出かけるなどして、親がルールを教える機会をつくりました。

バスで一人で出かけられるようになったのは、小学校5年の頃からです。
ところで、外出というのは、目的がなければ成立しないもので、小学校3年の頃から障害児向けの学習塾に通っていたので、そこへ通うのを目的に、バスの乗り方を覚えてもらいました。
この塾に関しては、お勉強のためというより、放課後の余暇の過ごし方の一環として、利用させていただいた感じです。
一人で、バスに乗ることに関しては、実は私よりも、主人の方がとても心配しました。
でも、心配ばかりしていては、いつまでたっても一人で出かけられないから・・・・と、主人に言い聞かせて、思い切って実行に移しました。
初めは、行きだけ、慣れたら帰りもと言うふうに、段階的にやりました。
初日こそ、ルカも少し不安そうでしたが、慣れるのは以外に早く、私が心配してバス停まで迎えにいったりすると、逆に「一人でできるのに」と、怒られたりしました。

電車での外出は、彼は何しろ、路線地図を見るのが趣味ですから、方向はばっちりなのですが、切符の買い方に少し手間取りました。
小学校6年まで子供料金なので、自分で計算しなくてはならず、会社によって料金が切り捨てだったり、切り上げだったりするので、大人料金になる中学まで待って、一人で乗るようになりました。
現在では、乗り換えも出来るようになり、親としては、ずいぶん楽になったなあと思っています。

私が、車を運転しないので、電車やバスを利用する機会が多く、小さい頃から乗り慣れていたのがよかったのかも・・・・・
小さい頃は、いろいろな失敗をやってくれました。
バスに乗ったときの自分の座席の位置を、勝手に決めてしまって、そこにすでに他の人が乗っていると、「どいて!!」
と、言ってみたり、
バスの運転手のすぐ後ろの座席に座るのが好きで、そこから運転手に
「おい、運転手!!」
と、声をかけて、運転手に
「うるさい!!」
と、怒鳴られたこともありました。
自分の降りるバス停が近づくと、誰よりも早くピンポンを押さないと気が済まなくて、誰かが押してしまうと、パニックになったり・・・・・
もう、書き出すとキリがありません。
そんな、いろいろな失敗を経て、その都度修正していって、今があるんだなあと、こうやって書き出してみて、しみじみ思う私です。
このような、社会では受け入れられない行動は、やはり早いうちに対処しておくべきでしょう。
成長とともに、自然消滅してしまうものもありますが、うちの場合、小さいうちにいろんな問題が出てきて、早いうちに解決してきのがよかったのかなあと思っています。

しかし、今でも問題はあります。
例えば、お年寄りに席を譲るなどのファジイな問題は、ルカには理解しがたく、
「僕は、譲らない」
と、断言してしまったりします。
それは、彼が思いやりがないのではなく、どんな人が年寄りなのか・・・
どんな人に席を譲らなければならないのか・・・・ということが、理解できないことからきているのだと思います。
混んでいるときは席を立って、すいているときは座ってもいいなどということも、彼にとっては混乱のもとのようです。
バスは、何となくわかってきたのですが、電車の時はだいたいは、立っています。
アスペルガーの子が、一人で外出というのは、以外に早く出来そうです。
しかし、社会とうまく関わりながらの外出というのは、やはり難しいですね。


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