高機能、アスペの方は障害の程度が軽度ととらえられ、幼児期から福祉や医療のサービスを受けることは、なかなか難しいようですね。
ルカは幼児期は現在よりも障害の程度が重かったため、4才〜5才にかけて週3回自閉症児のための通園施設に通うことができました。
私は今もこのことにとても感謝しています。
なぜなら、子供の生活面の自立に向けて、将来を見通したアドバイスを受けることができたからです。
例えば、今回の質問のお風呂の問題。
これは子供が思春期にはいる準備段階として、是非考えてもらいたい問題です。
つまり親子であっても、母親と男の子の場合、それは大人になるにつれて異性との付き合いになります。
母親との関わり方が、異性との関わり方の一歩とも考えられるのです。
障害のない子の場合は、年頃になれば自然と異性との付き合い方がわかるものですが、自閉症の子の場合はそれが難しく、大人になっても女性に抱きついて、しばしば警察沙汰になることもありうるということ、それ故に、障害のない子よりむしろ早めに親子といえども、男性と女性の違いを意識するべきだということを、当時の通園の先生達から教えられました。私はルカを育てる上で、常にこのことが頭のはしっこにあったような気がします。
自閉症の子は恥ずかしいという感情がなかなか育ちにくいため、子供では許されていた行為を、大人になっても改めることができず、周囲から好奇の目で見られたりすることが結構あるようです。
例えばトイレ。まだ小さい男の子はパンツを下げておしりを出してタチションしても、誰もびっくりしないわけです。
でも、同じ事を大人がやったらどうでしょうか? 周囲の注目の的になること間違いなしです。
プール等の更衣室に入る場合。ちいさい頃はお母さんと一緒に女子更衣室でもいいですが、いずれは男子更衣室で着替えることを覚えなければなりません。
また、異性の子の着替えをのぞいたりすることもタブーです。
子供がお母さんのオッパイを触りながら眠りにつくのはかわいい光景ですが、大きくなるに連れてそれは気持ちわるーい光景へと変わっていきます。
お母さんとの買い物の付き合いで、女性の下着売り場に行くのも、小さい頃は許されても大きくなったらやめた方がいいですよね?
これらの事は、その時期になって急に区別しなさいと言われても、それまでの習慣があって急には変えられません。
一般的な子供の時期よりも少し早め早めに、親の方から男女の違いを説明していく必要があると思います。
ルカの場合は、トイレでオシッコをする場合、パンツやズボンを下げないでする仕方を幼児期の頃からしていました。
お風呂は小学校3年の頃から1人で入っています。こちらから注意しなくても、人前では着替えないようになったのは小学校5〜6年頃でしょうか?
わたし個人の考えとしては、10才くらいが境目かなー、それぐらいから、1人でお風呂に入ったり、お母さんともべたべたくっついたりしないように気をつけてあげて欲しいと思います。
が・・・ルカにも失敗はあります。
オシッコをするときのことは、ちいさい頃からやっていたので安心しきっていた私。なのに小学校6年の頃ルカと一緒にトイレに入ったルカパパが「ルカはおしりを出してタチションしている」と衝撃の事実を私に言ったのでありました。
そのころは、人前で着替えさえしなくなっていたルカなのに・・・。本人に聞いて見ると「トイレは男女別だから、いいと思った」とのこと。でも、「それは恥ずかしいことなんだよ」と言うと、ルカもかなりショックな様子でした。
この問題は、ジャージのようにチャックのついてないズボンの時とか・・・いろいろな場合があって結構難しいですね。今は、洋式トイレの所も増えているので、個室ですますという手もあるかなと思います。
それからお風呂。小学校5年の時、特殊学級の子だけで宿泊学習にいったときは「前をかくして恥ずかしがったのはルカくんだけでした」と言われ、恥ずかしいという感情がでてきているのかなと安心したのもつかの間、小学校6年の普通級の子達と行った修学旅行の時。
「ルカ君は前を隠さないで堂々とお風呂にはいったので、友達から冷やかされた」との報告を受けました。
これもルカにしてみれば、お風呂はどうせ裸なんだから・・・という思いがあったようです。一度身につけたマナーでも、自分なりに解釈し直して変えてしまうこともあり得るわけで、時々チェックが必要なことを痛感しました。
そして、最近のルカ。
女性に興味がでてくるこの頃。電車に乗っている女子高生やレストンランのウエイトレスのミニスカをじーっとみてしまうルカ。本人は見ていないというのですが・・・これはセクハラにあたると、折りをみて何度もルカに言っています。
それから・・・・これはちょっと違うかも知れませんが、知人から手作りソーセージをいただいた時のこと。「お母さんこれって・・・」私はなんとなくルカの言わんとしていることがわかってしまい、「そのことは後でね」とあわてて話を遮ったのでありました。後で聞いてみると、案の定ルカは「これって男のオ○ン○ンに似ている」と言いたかったそうで、「そういうことは口に出して言わないの!」と注意しました。
なかなか・・・なかなか課題はいっぱいのルカです。
ところで、ルカは幼児期から人にくっつくのがとても好きで、だっこすると私の顔をなめ回したり、身体に触られることがむしろ好きな奴でした。
でも、私は上記の理由からあまり人前でルカとべたべたすることを好みませんでした。
周囲からはそれが「スキンシップの不足」と受け止められてしまうことがありました。特に、小学校に入ってから「お母さん、だっこしてあげればいいのに」などと言われました。
私としては、だっこ、おんぶ等幼児期にイヤというほどやっていたわけですが、ルカの幼児期を知らない人から言わせると、スキンシップが足りないから、愛情不足だからとそれを障害と関連づけたがる人がたくさんいました。
スキンシップ不足と自閉症はなんの関連もないことをわかっていた私でも、その言葉にひどく傷ついたものです。
もちろん、親子との優しいふれあいは必要であり、思春期を見越してそんなに早くから男女を意識してしまうことはないと思います。
特に、自閉症の場合、愛着行動が障害のないお子さんより遅くに出現する場合が多いので、お母さんは「やっと」の思いがあって、ついその子の身体的な発達を忘れてしまって、赤ちゃんのようにかわいがってしまうことがあるようです。
でも、愛情表現は物理的に接近することだけではないはずです。
子供が大きくなるにつれて、スキンシップよりは、精神面での支えになってあげられることが、子供に対しての何よりの愛情ではないでしょうか?
落ち込んでいるときは、わざわざだっこして頭をなでてあげなくても、そっと肩をたたいて話を聞いてあげたほうが、子供も気が休まるのではと思います。