<ルカママより>

お友達とのトラブル・・・いじめやからかいなど障害のある子でもない子でもありうることですが、ルカの時に一番つらいなと思ったのは、味方になってくれる子がいないことでした。友達と意見があわなかったりして言い合いになっても、双方に友達がいて一緒に戦ってたりすると、子ども同士のことだから・・・と笑って済んでしまうようなこともあります。ルカの場合はなかなか味方になってくれる人がいなくて、気づいたら一人・・・なんですよね。また、状況を説明するのが苦手なために結局損をしてしまったりと、本人より親の方が歯ぎしりしていることって多かったです。
ただ、この問題、ケースバイケースで、こうすれば解決!という即効薬はなかなかありません。 ルカの具体例をひととおりお話します。

小学校5年の頃から、交流授業を増やしたので、そのぶん、交流級の友達とのトラブルも多くなってしまいました。 いくつかあげると、
○掃除の時間に先生のいないところで、頭をこづかれたりして一人だけ、掃除をやらされる。
○公園で靴を隠される。
○体育の着替えの時間、むりやり下着を脱がされる。
○体育交流のサッカーの試合で負けたとき「お前のせいだ」と責められる。
○家からお金を持ち出すように命令される。
○コンビニにいって、成人向けの本を見てくるよう強要される。(これってルカも好きでやってたかも???)
等々・・・いろいろあるものです。
低学年の頃は単純に「バカ〜」とか言われて、ルカも「バカ〜」なんて言い返して、しかも私のいる前だったりして、無邪気なものなのですが、年齢が上がって来るに連れて、なかなかバラエティー豊かになり難しくなってきます。 こういうことが起こった場合、どのように対処すればいいのか悩むところです。
うちの場合、
まず、ルカにくわしく状況を聞く。→特殊学級の担任に連絡→相手がはっきりわかる場合は先生から相手に注意してもらう。不特定多数の場合は学活のおりに全体注意。→それでもおさまらない場合、相手と接触しないよう環境を整備。というような手順で行っています。 長年のこの連携プレー、今ではしっかり板について、スピード解決することが多くなっています。 えっ?相手の親に直接言ったりしないの?と思っているそこのあなた・・・それはやめた方がいいです。親同士がでてくると感情が先行してしまい、まとまる話もまとまりません。 いじめという、感情論に走ったらまことにはらわたの煮えくりかえるこの行為・・・でも怒っても泣いても解決しません。冷静に考えましょう。

まず最初の段階・・・誰かにいじめられていることを報告できるか。これが最大の難関です。普段から学校のことはなんでも話し合える親子関係でありたいものです。我が家の場合は夕食時。連絡帳を参考に今日の出来事をルカに聞いてみたりします。 でも、その日あったことを報告するのって、とても難しいものです。自分の感じたままを言っているに過ぎないので、子どもの話を鵜呑みにしないで、裏付け捜査は必要かも?。それからこれは私の失敗談ですが、友達にいじめられたなどという悪い話だと、どうしても聞く方もこわーい顔をして聞いてることがあります。ルカはこれが苦手でした。「またこんな話をするとお母さんが怖い顔をする・・」といって、話を渋ることがありました。冷静に事実関係を聞いてあげて下さい。「大変だったね」と一言付け加えてあげるだけで、ルカは十分癒されるようです。

次に担任の先生に説明・・・連絡帳で報告ということが多いです。事実関係がはっきりしないのに、「どうしてくれるの?」なんて感じで学校に怒鳴り込まないようにしましょう(笑)「これこれこういうことですので、よろしく対処して下さい」と理論的に言った方が、学校側も動きやすいし、正直に結果も話してくれると思います。
この段階での注意点としては、やはり学校も大騒ぎしないことだと思います。上記のサッカーの件では、ルカにそう言っているのを交流級の担任の先生が聞いていたため、先生は激怒!それからルカも含めて交流の教室に戻り、小一時間、クラス全体に説教になってしまったとのこと。これはありがたいことなのですが、ルカはそう感じてはいませんでした。「自分のせいで大変なことになってしまった・・・学校休もうかな?」と、ルカはこの時始めて学校に行くのを渋りました。子どものタイプにもよりますが、ルカはたとえ自分をいじめた相手であっても、人が叱られている状況に遭遇するは嫌なのです。
それから、先生の力量も見なくてはいけません。トラブルに対処できそうにない先生も残念ながらいます。ルカの場合もそういう先生が中にはいたので、上記の掃除のトラブルの時などは掃除交流そのものを中止にしてもらいました。

やはり解決への一番の近道は、トラブルの起こりそうな状況を前もってつくらないように予防することです。相手も発展途上の人間です。なかなかすぐ心を改めてはくれません。相性の問題もあり、ルカを見るとどうしてもむかついてしまう・・・ということもあります。そういう場合は、ニアミスしないように周りが配慮する、ルカ自身も防衛索を身につけるということが必要になってきました。

ASの子は不測の事態に対する対処がほんとにヘタです。からかわれたらそこから逃げ出せばいいのに、立ちすくんだまま身動きすらできないという状況になってしまいます。ルカの場合もはじめはそうでした。何度か経験して、対処の方法を学んできました。ルカが覚えたのは、まずお母さんに話すこと・・・そしてだんだんに特殊学級の先生に自分から話せるようになってきました。なぜそれができるようになったかと言えば、何度か経験してそうすることで解決できるということがわかったからです。それから、一度嫌な想いをした子の近くには行かないこととか・・・当たり前のことばかりなのですが、ひとつひとつ経験してみないとわからないことばかりのようです。
ルカの場合は特殊学級だったので、交流級でなにかあったら特殊学級に避難!ということができました。学校の先生方にもお願いして、そういう避難場所は確保したいものです。そこへ自分から行く・・・困ったときは助けを求めるという手段を身につけたいものです。

・・・とまあ、こちらが一方的に被害者の立場で書いてしまいましたが、ASの子の中には周りの状況がよく把握できずに、他に迷惑をかけていることも多いものです。自分のことが見えないので相手ばかりを一方的に責めるということもよくある話です。周りが状況をよく把握して、公平な立場で事の解決にあたりたいものです。なにか不適切な行動をしてしまった場合は、どうしてそれがだめなことなのか・・・本人とよく話し合って下さい。発達の段階からいってまだ無理な時は、環境を整備するしかないですね。(トラブルの原因になったところへは参加しないとか)


ルカは小学校の頃からずっと特殊学級ですが、特殊学級を選んだ理由は「ルカにあった特別な教育を受けたい」というのが、一番の理由です。しかし、それに付随するものとして「ルカを守ってあげたい」ということも私の気持ちの中にありました。
当時私は2次的障害という言葉を耳にしていました。ルカは生まれつき自閉症という障害をもって生まれてきたわけです。それはもう、生まれつきの障害ですから親はどうすることもできもせん。しかしながら、生まれたあと、不適切な環境に置かれたことで、ますます障害が悪化することもあり得るという話です。例えば、自閉症は人間嫌いのようなイメージが昔ありましたが、それは、障害を理解しない人の中に置かれたための2次的な障害だとも考えられます。本来は、人とのコミュニケーションが苦手なだけであって、人を嫌いなわけではなかったのに、対人関係においてつらい経験が重なり、人そのものが嫌いになってしまうという図式です。私は、それだけは防ぎたかったのです。
幼児期からのルカの様子を見ていると、いじめられやすい子であるということは、一目瞭然でした。ルカは周りの刺激に見事に反応してしまうタイプの子でした。周りからすれば、こんなにからかいがいのある子はいないんじゃないか・・・と私は思いました。
それと同時に異質なものは排除されるものなのだということを感じました。小さい子ども達は何の先入観もないのに、本能的に弱いもの(異質なもの)をかぎ分けて、仲間外れにしてしまうようなところがあるように思います。
でもそのままでは動物とおなじです。人間が社会的に生きていくためには、互いの違いを認めあって共存していくすべをお互いに見つけださなくてはならないのです。それには"理性"を育てることが必要となってきます。子どもの成長段階では、まだ理性の獲得の途中であるワケですから、いろいろあって当然です。ルカの場合もつらいこともありましたが、様々な体験がルカの心の成長にプラスに働いてくれたであろうと信じたいです。人間不信となるような痛々しい体験をしなかったことは、本当に幸いなことでした。
ルカのあとに続く皆さんも、たくさんいい経験をして、ながーい学童期を乗り切って欲しいものだと思います。
それには、理性のある大人の手助けが絶対に必要です。


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