瀬川明子の人形たちと・・・
                                                                
                                                               ゑ女のこころがたり

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                                     モノフォビア
            ・・・・・孤独という名の

      何度か試してみました

      何も見えないこの場所で
      私を呼ぶ声がするので
      耳を欹てるのですが
      
      声は
      
      あっという間に どこかに攫われてしまうので
      何を言っているのか聞き取れません

      たとえ 見えていたとしても
      ひとりぼっちでいることに
      代わりは無い事だけは
      わかっていましたから
      しかたなく 手探りで歩いています

      それでも 時間だけが
      コトリともせず 素通りしていくのが
      怖くって
      早足で追いかけては 孤独 という名のそのひとに
       「まだかしらん?」 と、何度も問うてみるのです
      
                                    ・・・だから 答えてくれますか  そう、ゆっくりと 
                                     
                                   
                                      






        


               囚われ
                 ・・・・・・ snake venom
 
            逢瀬という次元を待っているうちに どういうわけか
            人々はワレラを忌み嫌い 挙句に 糾える縄にその身を囚われて

            「まだ?」
            時は彼方の時空に姿を隠し 闇と光に区切られた分身を
            イケニエに晒し   
            知らん顔

            聞くなと言うのなら聞きません
            呼ぶなというのなら呼びません
            けれど   
            待つな・・・とだけは言わないで

            のた打ち回るのが苦しみなら 何度も地に堕ち 蠢くさまを
            こうして露わにしてきたが それもこれも

            あの約束事に縛られたこの世に屯(たむろ)するサダメなり
            いまもいまとて雁字搦め(がんじがらめ)に

            こころに「愛」という毒を 巻きつける
                                         






      
           


           オモネルヒマワリ 
                          ・・・太陽に恋したクリティ

 
     
 いかないでください
       あたしを置いてきぼりにしないで下さい

       いつだって あなたのあたしでいたかったのに
       なのに そう いつからでしょう
       オモネルあたしになってしまったのは
       
       たしかに 
       きいろい光はあなたをつつんでいます
       シアワセの種は
       あなたの手の中にしっかりと握られて
       あなたは雲の上で 笑いながら 「さよなら」 と・・・

       あなたの後姿は とてもまぶしくて
       いかないでください と あなたを見上げるたび
       あたしの胸は飛び散って 張り裂けそうで
       でも それがあたしにあたえられた「いま」なら
       あたしはもう泣きません
       
       これからは
       誰の為ではなく あたしはあたしのために
       笑います






            
         
                    



                     夢想する
                                        ・・・by Snail'S Dream

                        
                        ――― はじまりは
                        それは とてもかんたんなこと。 
                        あなたはそう言いました。
                        はじめはわたしも そう思っていました。
                        そう・・・それは とても たやすいことだと。

                        ――― 邂逅
                        まだ幼いわたしでした。
                        出会う不思議も、別れゆくカナシミも
                        そんな感情があろうことなど知らず
                        あの日も
                        太陽が白化粧に身を包み 雲に嫁いでゆく空を
                        ひとり見上げておりました。
                        わたしの後ろで声がして
                        振り向くと あなたがいました。
                        「 どちらへ 」
                        わたしがそう聞くと あなたはためらいながら答えました。
                        「 じつは 迷っているのです 」
                        だから おもわずわたしはこう言ってしまったのです。
                        「 では、いっしょにまいりましょう 」  と。
 
                        ――― 共生
                        雲の饗宴は夜更けまで続きましたので
                        わたしたちは月も星もない闇を
                        手を取り合って前に進むしか道はなくて
                        夜明けには あなたは もうわたしのなかで
                        ああ・・・あなたの惑いごとそっくり まるごと
                        それがあなたとの日々のはじまりでした。
                        空は そんなふたりを包み込むように 
                        細い絹糸の雨をいく筋も垂らすのでした。

                        ――― 愛
                        なんと呼べばいいのでしょう。
                        離れがたい という 感情の
                        それは・・・呪術をかけられたよう
                        すぐにわたしは「愛」を孕み 「愛」を産み落としました。
                        「愛」は忽ちのうちに 大きく育ち
                        もうわたしひとりでは抱え切れないくらいで
                        だから・・ほんのちょっぴり重たくなって 
                        ・・・・・・そう、重たくて。
                        外を覗けば 雨はまだ霧のように煙っていて・・・

                        ――― 擦れ違い
                        おかしなものです。
                        心なしか あたりの景色まで冷たく感じて
                        同じ空間を共有していた はずなのに
                        散リ散りということばが頭に 降り注ぎ
                        それは尖った針のようで 痛いのでわたしは
                        もういちど 放り投げた「愛」をかき集めようと
                        けれど 「愛」は雨水に浸され 拾おうとしても形は見えず
                        そして、 ちょっと・・と 言い置いて あなたは出て行ったままで

                        ――― 受容
                        おかしいですか?
                        諦めたのではありません。
                        仕方がないというのでもありません。
                        ただ、ここにあるものだけを見て、ここにあるものだけを食べて
                        いまわたしにできること。
                        それは この触覚を伸ばし あしたのお天気を気にすること?
                        そういえば 空はお日様を閉じ込めたまま
                        相変わらず 空白な寝息を立てておりました。

                        ――― 夢想する
                        さっき 夢を見ました。
                        あなたの? ・・・・・・はい。
                        わたしが見る夢には あなたしか出てきません。
                        迷うあなたのあの眼だけが わたしのなかでいつも何かを探しているのです。
                        もう とうに忘れたはずの・・・なにかを

                        ――― 雌雄同体
                        もしかしたら
                        こうなることはずっと前に決まっていた運命なのかもしれません。
                        感じたのです。わたしの触覚が?・・・いいえ、わたしのこころ・・が
                        随分と昔から わたしのどこかで騒ぐものの正体を   まさか
                        あなたがこんなにすぐそばにいたなんて   
                        おしえて下さい。  いつからだったのでしょうか?
                        あなたのなかにわたしがいたのは!

                        ――― ふたたびの
                        ほんとうに とても簡単なことでした。
                        「愛」の真ん中にあなたがいて、あなたの「愛」で わたしはくるまれていて
                        わたしもあなたも ただ愛し合えばそれで いいのでした。そう・・それで
                        ほら・・・ようやく雨も上がったようです。
                     
 
                        

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